Antano ミルツィアデ・アンタノ
イタリア Italia / Umbria
2軒しか残っていない『古典派サグランティーノ』
世界的なトレンドの変化によってサグランティーノは一気にモダンなワインへと変貌してしまった。しかし2軒だけ残って いた古典的造り手がパオロ・ベアとミルツィアデ・アンタノ。
サグランティーノの歴史
「サグランティーノ」は 1960 年代にパッシート(甘口) 用に植えられた。高い糖度を得られるがタンニンが 強すぎるので、陰干しして甘く仕上げて飲みやすくし たのが始まり。 セッコ(辛口)が造られるようになったのは 1980 年代 後半。1990 年代に入ると「アルナルド・カプライ」が現 代風にアレンジした「サグランティーノ・ディ・モンテフ ァルコ」を造り人気を獲得。
『アルナルド・カプライのお陰でサグランティーノは有 名になったが、昔ながらのサグランティーノは無くなっ た。全て現代的なワインに変わっていった』
「モンテファルコ」から 1km ほど北西の丘の上「ベヴァ ーニャ」という町に位置する「ミルツィアデ・アンタノ」。 モンテファルコの老舗だがウンブリアには何処にでも ある普通の農家。 しかし、彼等はウンブリアのワイン文化の歴史、サグラ ンティーノの歴史にとって重要な家族。 当初は小作人だった一家。1969 年、現当主「フラン チェスコ」の父「ミルツィアデ」が 30ha の土地を購入。 ワイン造りとキアーナ牛の放牧を始める。 1975 年に初めてモンテファルコ・ロッソとサグランティ ーノ・パッシートを醸造。家族と友人の為だけに造っ たものだった。 1980 年には「サグランティーノ・セッコ」の生産も開始 し、ボトリングまでを自分達で行い、本格的に販売を 開始した。
『父親が造っていたのは伝統的なサグランティーノ。 強靭なタンニンと濃厚な果実がサグランティーノの特 徴。何も変える必要はない』
古典的サグランティーノは2軒だけ
サグランティーノは 1990 年代のブームで世界基準 の味わいに近づいた。しかし、本来のサグランティー ノは激減した。 サグランティーノは気難しい品種と言われる。しかし 世界中でウンブリアの極一部でしか育たないサグラン ティーノの個性が途絶えるのは寂しい。 「パオロ・ベア」当主の「ジャン・ピエロ」氏もサグランテ ィーノの未来を危惧している 1 人。 古典的なサグランティーノは「パオロ・ベア」と「アンタ ノ」しか残っていないという危機的状況にある。
『サグランティーノは粗野で無骨でわがまま。タンニン 量が多いし、糖度と酸度のバランスが難しい。よっ て適切な収穫時期も短い。扱い難い品種』
「フランチェスコ」によると粗野で無作法な喰えない奴 というサングランティーノ。 女性と同じでゆっくり熟成することによって丸く、上品 にまとまる。成熟した色気を隠しているのだそう。 ワインは土壌から生まれる。畑での葡萄樹のケアが 品質を決定するというのが父親の教え。「フランチェ スコ」は生活の大半を畑で過ごしている。
父親と同じことを続けていくだけ
醸造所は自宅のガレージを改装したもの。樽熟成庫 は地下部分。小さなカンティーナ。
『収穫時期はタンニンの成熟を見て決定する。糖分 や酸度では決めない。例年 9 月末から 10 月第 1 週になることが多い』
全ての畑を手で収穫。ステンレスタンクで発酵。全て 天然酵母のみ。彼等の畑は 30 年以上ボルドー液以 外使用していない。
『畑で薬品を使わないので野生酵母だけで発酵でき る。マセラシオンは 20 日程度。しっかりピシャージュ し発酵を活性化させる』
樹齢は 10 年~40 年。区画によって異なる。熟成期 間が長く、「モンテファルコ・ロッソ」でトノーを中心に 色々なサイズの古樽で 18 ヶ月。 「サグランティーノ・ディ・モンテファルコ」では 30 ヶ月 間大樽で熟成される。
『サグランティーノは若いうちは飲み難い。サンジョヴ ェーゼ主体で 15%サグランティーノをブレンドしたモン テファルコ・ロッソから試して欲しい。サグランティーノ の魅力を感じてもらえるはず』