Graci グラーチ
イタリア Italia / Sicilia

『エトナ』の繊細さを感じて欲しい
エトナ北側斜面。ブルゴーニュのような軽やかで伸びのある新しいタイプのエトナ。醸造はクラシック。セメントタンクで の長期間発酵。大樽での熟成。グラーチ独特の仕上り。
新しい世代のエトナ
「ベナンティ」から始まったエトナの歴史。その後「マルク・デ・グラッツィア」「パッソピッシャーロ」等の新しいスタイルの造り手が出現し、一気にエトナは世界的人気の産地に変化した。そして今、第3世代が出てきている。「フランク・コーネリッセン」「ジローラモ・ルッソ」「グラーチ」。非常に仲が良く、お互いのワイン造りを認め合う3人。
『元々実家はシチリアの葡萄栽培農家だったが、農家は継がずにミラノの投資銀行で働いていた。エトナを訪れてワイン造りを夢見るようになった』
2004年、お爺さんの死を機に実家に戻った「アルベルト・グラーチ」は量を重視した一般的なシチリアの栽培農家だったお爺さんの荘園を売り、エトナの畑を購入した。
『エトナは特別な土地。火山岩土壌。豊富な太陽がありながら標高が高いので冷涼。そして、樹齢100年以上の古い樹が残っている』
アルベルトの好むワインは「ジュゼッペ・マスカレッロ」 や「ジャコモ・コンテルノ」のバローロ。
『規律の中に厳格さがある。妖艶さ、純粋さがあって野蛮さはない。そんなワインを造りたい』
彼のカンティーナは100年以上の歴史を持つ建物。古い大樽が残り、木製のプレス機も残っている。発酵槽は大きすぎて使えないので小型のセメントタンクを導入した。
『ステンレスは発酵時に温度が一気に上がるので駄目。ゆっくり温度が上がるセメントタンクは酵母の能力を最大限引き出せる』
パッソピッシャーロの100年樹
畑はエトナの北斜面。今イタリアで最も注目を集めている産地と言えるかも知れない「パッソピッシャーロ」地区に位置。2004年に購入した所有畑は標高660mの畑「アルクリア」と標高1000mを越える畑で「フランク・コーネリッセン」の隣の畑「バルバベッキ」の2つ。
『以前の所有者がケチだったお陰で一切農薬が使われていなかった。葡萄樹は効果的に剪定されていなかったが、土壌は痛んでいなかった』
「アルクリア」は25haの敷地の内15haが葡萄畑でネレッロ・マスカレーゼが90%。ネレッロ・カプッチョとカタラット、カリカンテが植えられている。
『バルバベッキはフィロキセラも到達していない区画。よってほとんどの樹が自根。標高が高すぎるのでオリーブとリンゴしか育たない』
「バルバベッキ」は標高が1200mを超えるので湿気が少ないし、ウィルスも少ない。病気の原因は湿気とウィルスなので、ここでは病気がほとんど無い。一切農薬は使用しない。ボルドー液さえも使わないで栽培することが可能だが、極度の乾燥によって自然発生する山火事が度々問題になる。
『1200mの畑では葡萄が完熟するのは11月。ゆっくり熟した葡萄は果皮の成分が豊かで、タンニンに青さがない』
1つの樹から3房だけ
D.R.Cのヴィレーヌ氏もグラーチを称賛していて、カンティーナを訪問している。ジャンシス・ロビンソンもグラーチを称賛。
『グラーチは若い造り手だが注目に値する。彼のワインはバローロ、バルバレスコ、もしくはブルゴーニュのようだ』
エチケットにはエトナ・チルネコ(1000年以上前からエトナに生息する犬)が描かれている。
『エトナの個性を表現するワインを造るにはエトナの自然を守ることから始めるべき。除草剤や薬品を使わず畑を維持していく』
更に土地の個性を表すには樹齢が高くなければいけない。地中深くまで根を伸ばしていることが重要。
『樹齢が高いので収量は自然と減る。1つの樹には3~4房しか収穫できない。更に葡萄樹は水分を吸い上げる力が弱いので粒も小さくなる』
醸造はシンプル。発酵はセメントタンクで区画毎に始まる。自然酵母のみ。発酵終了後はオーストリア「ストッキンガー」製の大樽で熟成する。ノンフィルター、ノンコラージュ。
『セメントタンクでの発酵と目の細かい大樽で時間をかけて熟成させることが重要』