Girolamo Russo ジローラモ・ルッソ
イタリア Italia / Sicilia
『エトナ』で最も注目されている若手醸造家
フランク・コーネリッセンと共にワイン造りを始めた。凝縮度が高く、力強い新しいタイプのエトナ。近年移り住んできた 新しい造り手とは違い、地元人なので最高の区画を多く所有。
10 倍に高騰したエトナ
「ベナンティ」によって高品質ワインの産地に産まれ 変わった「エトナ」。今では多くの造り手が進出し、エト ナの価値は一気に向上した。
『エトナの土地は高騰し、土地の値段は 10 年前の 10 倍にまで上がってしまった。今では買うことは不 可能だし、手放す人もいない』
「グラーチ」「マルク・デ・グラッツィア」と人気の造り手 も多いが、今一番人気でワインが全く手に入らないの が「ジローラモ・ルッソ」。
『シャンシス・ロビンソンやワイン・アドヴォゲイトが絶 賛したことで 2015 年に世界的に人気になってしま った。ワインはリリースと同時に完売する』
当主は「ジュゼッペ・ルッソ」。パッシピッシャーロ地区 で代々葡萄栽培を行ってきた葡萄栽培農家の息子 で、この地域の地主でもある。
『エトナが注目されて有能な造り手達が移住し、ワイ ン造りを始めた。この土地で産まれた自分こそエト ナ・ワインを造るべきなのではと考えた』
2003 年、26ha の土地を父親から相続。15ha の葡 萄畑はエトナ北斜面の標高 650~800m に位置。葡 萄栽培農家だったので良い区画を元々所有している のが彼の有利な点になっている。 自分 1 人で管理できるだけの畑を残し、その他の畑 は「パッソピッシャーロ」や「フランク・コーネリッセン」等 優れた造り手に貸している。
黒色火山岩土壌
彼の畑には過去の噴火で流れ出た溶岩の塊が残さ れている。土壌はこの火山岩が時間をかけて風化し、 細かい砂になったものが粘土と混ざったもの。
『火山岩は水はけが良く、PH が低い。葡萄は熟しな がらも酸度を保つことができる。マンガンや鉄が多 いのもエトナの大きな特徴』
シチリアならではの強烈な陽光は北側斜面の為に適 度に制限され、過熟を防いでくれる。南斜面より収穫 は 2 週間程度遅い。
『シチリアは暑いが、エトナ北斜面の夜は寒い。日中 40 度を越しても夜間は 10 度以下まで冷やされる。 この温度差が葡萄にストレスを与える』
適度なストレスは葡萄に生命力を与える。葡萄は生 き抜く為に糖分を蓄え、病気や外敵から守る為にタ ンニンや酸を蓄える。 人間と同じで、少し苦労した葡萄は強く育つ。葡萄樹 はストレスを受けて丈夫になっていく。人間が守れば 守るほど葡萄は弱くなっていく。
『樹齢は 50~100 年。フィロキセラ以前の樹も多く 残っている。収量は 35 キンタル/haと通常の造り手 の半分以下』
凝縮度の高い小粒の葡萄から造られる彼のワインは 圧倒的な濃厚さを持っていて、若いうちは理解しにく いワイン。時間と共にエトナ特有のミネラルや、真っ 直ぐなストラクチャーが出てくる。
フランクとグラッツィア
「ジュゼッペ」は 2003 年にワイン造りを始めるまで大 学の数学教師をしながらピアノ奏者として活躍してい た。ワイン造りは全くの素人だった。
『友人のフランク・コーネリッセンに栽培とワイン造り を教わった。自宅のガレージから始まったワイン造り はピアノと似ていて、感覚が重要だと思った』
醸造技術に頼るのではなく、葡萄の力を最大限引き 出すという「フランク」の考え方に共感し、畑での栽培 方法も変更していく。 有機栽培は勿論だが、葡萄樹に耐性を備えさせて いくことが重要。薬剤を一切使用せずに畑を作り上げ ていった。
『一方でマルク・デ・グラッツィアとも親交が深く、化 学的研究で各クリュを分析、最良の収穫やクローン の剪定を行っている』
ジュゼッペは数学教師でありながらピアノ奏者であっ たように、化学的研究で理想を追求しながら、アーテ ィストのように感覚も大切にしている。
『エトナで産まれて育ったが、ワイン造りの経験で、も っとエトナを理解するべきだと感じている。葡萄は生 命力に溢れる植物でエトナを知っている』