Maley マレイ
イタリア Italia / Aosta
ヴァッレ・ダオスタ産シードルが復活
アオスタで非常に珍しい自家醸造シードルが復活。マッターホルンの高地にある樹齢300年という高樹齢のリンゴ から個性的なシードルを造り出している。
アルプスの伝統シードル
イタリアでの「シードル」の認知度は非常に低いが「ヴ ァッレ・ダオスタ」では第 2 次大戦前までは日常的に 飲まれていた。 「モンテ・ビアンコ」の麓で伝統的な酒「シードル」の 復活を実現させたのが「マレイ」。 グラッパ蒸留所「ラ・ヴァルドタイネ」の敷地内に間借 りしていて醸造責任者は「カーヴ・ド・ヴァン・ブラン・ ド・モルジェ」で長く醸造責任者を務めていた「ジャン ルカ・テッローリ」。
『スプマンテの為に畑を探していた時、荒廃したリンゴ樹を見つけた。地元の老人からシードルの話を聞 き驚いた。昔、ここはシードルの産地だった』
アオスタ渓谷の中心部「ブリソーニュ」に位置。標高 は 900m。白樺の森に囲まれたリンゴ樹が残されて いる。葡萄は寒過ぎて育たない。 「シードル」に使われるリンゴはブラン・ド・モルジェが 造られるラ・サレ地区の「ラヴェンツェ種」とフランス領シャモニーで栽培される「クロッソン・ド・ブシ種」の 2 つの品種。
『2 種のリンゴにアルプスの伝統製法に従い 4%程 の洋ナシが加える。華やかな香と軽さが出る』
自社畑に加えて樹齢の高い樹を所有する栽培家からリンゴを購入している。全てのリンゴはある一定の有機栽培規定を満たしたものを使用。
『リンゴの樹は300年以上も生きるので樹を切ると罰せられる法律があった。だからシードルが造られ なくなっても樹は残っていた』
1 世紀以上前からそれぞれの地区の果樹園は協力 し合ってシードルを造り上げてきた。
標高1000mで育つリンゴ
「モンテ・ビアンコ」のリンゴは最も高い畑で標高 1,000m を超えており、生産は困難を極めるが、果実自体の芳香は他の地域を圧倒する。
『葡萄もハーブも同じだけど高地で育つ植物、果実は香味成分が豊かで繊細さを味わえる。それは発 酵工程を経ても同じ』
標高 1,000m のリンゴは樹齢 80 年を超えている。 標高の高さでカビや害虫、病気の心配もほとんど無 い。害虫さえも生きられない環境。「ラヴェンツェ種」と「フラクロッソン・ド・ブシ種」は高い酸度と豊富なタンニン。そして適度な糖分を備えて いる。
『酸度、糖度、タンニン、1 つでも欠けていればシー ドルは完成しない。リンゴは完全に熟して自然と落 ちたものを拾って収穫する』
メトド・アンセストラル
マレイでは最も伝統的な手法である「メトド・アンセス トラル」で「シードル」を造っている。
『メトド・アンセストラルを採用している造り手は年々減少。伝統は守らなくてはいけない』
リンゴは酸度と糖度のバランスを見ながら全て手作業で収穫される。300kg のカゴに入れて優しく醸造所に搬入、手早く切り刻み種子を取り除きローラー・プレス機に投入する。 搾り出されたモストは冷蔵室の中に置かれ浮遊物を落ち着かせる。発酵は大きな樽の中で自然酵母の みでゆっくりと進んでいく。
『培養酵母や砂糖などは足さない。アルコールが 2.5%まで上がったら冷却、フィルターに通す』
その後、ボトルに移し、更に発酵が進んでいくことで天然の発泡を手に入れる。
『この手法で醸したシードルは還元状態にある。空 気と触れさせると開き始める』
フルートグラスでのサービスは避け、白ワイングラス、もしくは「シードル・ボウル」などで空気と触れる面を 多くすることが重要。ゆっくりと香が開きだす。