Michel Savel(Herve Souhaut) ミッシェル・サヴェル/エルヴェ・スオー
フランス France / Cotes du Rhone
ティエリー・アルマン、ダール・エ・リボ、パカレに学んだ
北アルディッシュで唯一ワインを造っている「エルヴェ・スオー」が始めた新しいワイン。隣人の「ミッシェル・サヴェル」 の所有畑をエルヴェが栽培・醸造する。初ヴィンテージは 2015 年。
エルヴェ・スオーの挑戦
ローヌに自然なワイン造りを広めた立役者「ティエリ ー・アルマン」で自然栽培、そして、亜硫酸に頼らな い自然な醸造を学んだ「エルヴェ・スオー」。 その後、1991 年には「フィリップ・パカレ」の薦めでも う少し過激なナチュラリスト「ダール・エ・リボ」で働き 始めます。
『ローヌの自然なワイン造りの 2 人の巨匠と共に働 き、学んだことは教科書にはない、経験でしか得ら れない法則だった』
その後、1993 年には奥様であるベアトリスの実家で 北部アルディッシュに位置する「ロマノー・デストゥゼ」 を引き継ぎます。
『フィロキセラ前からワイン造りを行ってきた歴史が あるだけに地質的にも天候的にもフランスで最高 の条件を持っている』
ティエリー・アルマンとダール・エ・リボは全く違います。 エルヴェ・スオーのスタイルも違います。彼は両者の 仕事を経験して自分なりのバランスを作り出している のです。
『最も影響を受けたのはフィリップ・パカレ。経験を 基に理論的に醸造を進化させているフィリップから 学び、今のスタイルがある』
ローヌのナチュラルさというよりブルゴーニュのような 上品さ、質感を感じるのは彼が目指している方向な のかもしれません。
『アルディッシュ北部のアルルボスク村は南部ローヌ とは全く異なるテロワール。それに合わせたワイン造 りがパカレのアドバイスだった』
16 世紀に建てられたセラーは電気を使用しないで も適度な冷気を保つよう設計され、今も当時と同じ ように扉の開け閉めで温度管理が十分に可能。
北アルディッシュ唯一の造り手
いつも明るく、人懐っこい彼等の隣人「ミッシェル・サ ヴェル」は彼等のワインのファンで、ドメーヌでワインを 量り売りで購入していた。
『石職人のミッシェルは採掘し終わった土地で葡萄 を育て栽培・醸造を僕等に任せるという提案をくれ た。勿論、快諾した』
こうして「ミッシェル・サヴェル」は誕生します。植樹は 2009 年。ワイン醸造は 2015 年から開始。 畑の所有者はミッシェルなので登記上はドメーヌで はなくなるが、栽培・醸造共に彼等が担当。
『栽培も醸造もエルヴェ・スオーと同じカーヴで同じ 哲学で行うが樹が若いので今の段階ではフレッシュ で気軽に飲めるスタイルに仕上げる』
畑はエルヴェ・スオーの周辺で真南を向く、急勾配 斜面。ここに石職人ミッシェルが石壁を作り、段々畑 に仕上げている。 石壁は砂質を含む花崗岩の流出を防ぎ、段差が出 来る事で、より風通しと効率的な日照量を手に入れ ている。
『北部アルディッシュは雨量が少なく、1 年を通して 乾燥しており、カビ、病気がほぼ無いのでボルドー 液がほとんど必要ない』
2 つの分かれた畑は共に標高 400m 程度。北風が 吹きぬける丘陵部なのでウイルスやカビを風が吹き 飛ばしてくれる。 病気に弱い若い樹も灌漑せえずに生きられる位に 葡萄にとって理想的な環境になっている。
『フィロキセラ前は葡萄栽培家が沢山いたが、今は 僕達 1 軒。北アルディッシュは土地が安いのでリー ズナブルなワインでも高品質を実現できる』
畑ではビオディナミが実践され、除草剤、防虫剤は 一切使用されない。畑の周辺は 500 年以上そのま まの森林なので生物多様性が確保されている。
『ビオディナミがワインを美味しくする訳ではない。美 味しさは葡萄の高い品質を活かす正しい醸造でし か得られない』
近年の彼等のワインはより綺麗さが増し、重さはない。 還元や熟成前酸化もない。エルヴェの言うフレッシ ュさと美しい果実のバランスが強調されている。
フェミニンさとフレッシュさ
醸造はパカレの影響を強く受けている。全房、野生 酵母のみで発酵。発酵槽は開放型。足で踏んで発 酵を促すだけで何も添加しない。
『メルローのみセミ・マセラシオン・カルボニックを採 用することでシラー本来のフェミニンさやフレッシュ な香を残している』
収穫、醸造中は一切、亜硫酸は使用しない。勿論、 補糖、補酸もしない。ノン・フィルター、ノン・コラージ ュ。移し変えは重力を利用し、ポンプは最終のアッ サンブラージュ時のみ。
『ミッシェル・サヴェルでは抽出をできる限り抑えてい る。ピシャージュもエルヴェ・スオーの半分程度で優 しく行う』
あくまでも若樹だからこその「楽さ」を楽しむ為のキュ ヴェなので開けてすぐの香、素直な果実とフレッシュ な美味しさを目指している。 品種は 70%シラー、20%メルロー。メルローはこの 地域では伝統的な品種でシラー、そしてセミ・マセラ シオン・カルボニックと相性が良い。
『発酵後、古いバリック及びトノーに入れて熟成。翌 年の発酵が始まったらボトリング。瓶詰め前に極少 量の酸化防止剤を添加』