Jamart ジャマール
フランス France / Champagne

樹齢80年のピノ・ムニエ
エペルネ南西部のチョーク質土壌の畑からピノ・ムニエを中心に栽培。樹齢80年を超すピノ・ムニエからは適度な厚みとミネラルがバランスする良質のシャンパーニュが造られる。
コトー・ド・シュッド・デペルネイ
ジャマールの創設は1934年。パン屋を営んでいたエミリアン・ジャマールとモエ・エ・シャンドンのカヴィストとして働いていた義父が村の醸造所を購入したことが始まり。当時は村に共同組合が無かった為、近隣の造り手はジャマールに葡萄を持ち込み圧搾していた。圧搾機の使用料やパン代のツケとして支払われた葡萄を使ってワイン造りを始めた。
『現在は4.8haの自社畑を所有しているが、家族経営なので自分達の手作業で可能な量だけをワインにしている』
本拠地は「コトー・ド・シュッド・デペルネイ」のサン・マルタン・ダブロワ村。コトー・ド・シュッド・デペルネイは1996年誕生の新しい地域。ヴァレ・ド・ラ・マルヌとモンターニュ・ド・ランスの間、エペルネの南に位置する16の村が所属している。シャンパーニュの味わいの基盤となる真っ白いチョーク層が浅い表土のすぐ下に広がっている。
『まだ知られていない地域だが、良質のチョーク層に恵まれている。ヴァレ・ド・ラ・マルヌのふくよかさと、コート・デ・ブランのシャープなミネラルの両方を併せ持つのがこの地域の特徴』
近年、有名産地ではないお陰で「ラエルト・フレール」 など若手の優良生産者を輩出している。土壌は優れているので今後も注目が集まりそうだ。
白亜紀後期の凝縮したチョーク層
彼等の畑は白い。この地域の畑は20cm程の浅い表土の下に硬いチョーク層が30m以上続いている。畑の表土にもチョーク層の欠片が多く含まれる為、この地域の畑は全体的に白っぽく見える。白亜紀後期のチョーク層なので1億年から6500万年前に生物の死骸が海底に堆積し、押し潰されてできた土壌。ランス周辺の柔らかいチョーク層とは異なり、圧縮された硬いチョーク層。
『このチョーク層が私達のシャンパーニュの主役。軽やかなアロマと繊細なミネラルをもたらしてくれる。ランス周辺のチョークは若い世代。ここのチョークはより凝縮したチョーク質だ』
ジャマールではこの土壌を好むピノ・ムニエとシャルドネを中心に栽培している。冷涼な気候を好むシャルドネは斜面上部に。霜害に強いピノ・ムニエは丘の下部に植えている。
『コート・デ・ブランと似た土壌だが、日照量が多いので育つシャルドネは柔らかさを持つ。コート・デ・ブランが張りつめたミネラルと角ばった酸を持つのに対して、私達のシャルドネはしなやかで女性的。通常のコート・デ・ブランだと強すぎる料理やシチュエーションで選んで欲しい』
ピノ・ムニエの可能性
栽培品種はピノ・ムニエが50%、シャルドネ40%、ピノ・ノワールは10%だけ。ピノ・ムニエは1930年代に植えられた樹齢80年の区画も所有している。樹齢80年のピノ・ムニエは非常に希少。古樹はチョーク層の割れ目に根を喰い込ませ、下へ根を伸ばし、チョークを包み込むように根を伸ばしている。
『ピノ・ムニエが重要。シャルドネではなく、ピノ・ムニエによるミネラル感は攻撃的でなく、しなやかで丸みのある味わい』
醸造所では創業当時の設備を現在でも使用している。130年前の垂直式プレスも現役。プレス毎に四方の木枠を取り外す必要があり、4人掛かりの手作業になるが、通常の円形垂直式プレス機よりもゆっくりとした優しいプレスが可能。果皮や果梗からの余分な成分の抽出を避ける事ができる。専門業者に委託される事が多いデゴルジュマンやドザージュも全て醸造所内で行っている。
『醸造方法は祖父母の時代と何も変えていない。私達が造りたいのは豪華で非日常のシャンパーニュではない。この地域の個性である柔らかく女性的なシャンパーニュを毎日の食卓で楽しんで欲しい』