La Maison Romane Oroncio ラ・メゾン・ロマネ・オロンシオ
フランス France / Bourgogne
レビュー・ド・ヴァン・フランスの記者から転身
ドメーヌ・ゴビー、コント・アルマンで自然なワイン造りを学び
超優良生産者の葡萄から全房醗酵で個性的でストラクチャーのあるブルゴーニュを産む
❖馬での耕作を指南❖
2000年代前半、ブルゴーニュでビオディナミの導入が進むと同時に馬での耕作が見直されます。コント・ラフォン、シャンドン・ド・ブリアイユ等が馬の耕作を導入していきました。
『ハーレーを売り、プロスペルという名前の馬を購入。馬の特性を学び、畑の耕作が出来るように育てた。排気ガスも排出せず、土壌を押し固めない最高の耕作だ』
ブルゴーニュを中心にシャンパーニュ、ボルドーでも馬の耕作を推進したのがオロンス・ド・ベレールでした。畑の馬による耕作を行う専門の会社エキヴィヌムを設立して人気に。
『コント・ラフォン、クロ・デ・ランブレイ、ティボー・リジェ・ベレール、シャンドン・ド・ブリアイユという優良生産者が顧客で馬の耕作を始めて確実に土壌は改善していった』
トラクターは土を押し固めてしまうが、馬は土を固めずに耕作できる唯一の方法でした。馬の呼吸、糞は土壌内の有機物を増やす効果もあったのです。
『1990年代「ラ・レビュー・ド・ヴァン・フランス」の記者として色々な造り手を取材。ワインの論評に留まらず、ボーヌ醸造学校に入学し、醸造のディプロマを取得』
友人だったシャンドン・ド・ブリアイユで実際のワイン造りを経験しながら醸造を学んだオロンス。醸造学の限界を感じ、自然農法と自然醸造に興味を持ち始めます。
『更にドメーヌ・ゴビーとコント・アルマンで働き、ビオディナミ、そして自然醸造がワインの味わいにどう影響するのかを経験した。そこは醸造学とは別の世界だった』
ビオディナミと土壌の重要性を知ったオロンスは馬での耕作を請け負う会社を設立。2頭の馬を飼い、最盛期は20生産者の畑の耕作を請け負うまでに成長していったのです。
『馬の耕作で素晴らしい造り手達の仕事の一部を請け負った事で仲間になれた。彼等は僕がネゴスを立ち上げても自分達の葡萄を僕に販売してくれている』
❖全房醗酵の重要性❖
2004年、ヴォーヌ・ロマネ村の最も古いセラー、メゾン・ロマネを購入。2005年には耕作を請け負っていた造り手から葡萄を購入する形でワイン造りを開始してしまいます。
『2頭の馬はシャンドン・ド・ブリアイユに売却。メゾン・ロマネからニュイ・サン・ジョルジュの広いセラーに移転し、馬による耕作会社も解散し、ワイン造りに集中するようにした』
畑は所有していないので耕作を請け負っていた造り手から葡萄の状態で購入。シャブリからマコンまで全30ヶ所以上の畑の葡萄を購入し、醸造しています。
『自然農法を実践する造り手の葡萄のみを使用。各造り手と話し合い、収穫時期を決定。全房での醗酵なので茎まで熟してから収穫する事を大切にしている』
友人であるシャントレーヴの栗山さん曰く、オロンスはセンスと真面目さの両方を持った尊敬できる醸造家との事。栗山さんと同じく、全てのキュヴェを全房醗酵で仕上げています。
『全房醗酵は葡萄の持つエネルギーをワインに移していく為に最も重要と考えている。果皮や茎には自然環境の中で耐え抜いた証としての沢山の要素が含まれているのだから』
全房醗酵のお陰でモストが少しずつ発酵するので発酵温度が低い状態から徐々に上がる。色々な酵母が活動する余地があり、ワインの複雑性を増してくれるのです。
『野生酵母は種類によって活動できる温度帯が違う。発酵温度が緩やかに上がっていく事で色々な野生酵母が活動する事ができるのでワインは複雑味を得る』
また、茎の水分がアルコール度数を下げ、タンニンが収斂味を増してくれるのでワインは単調ではなく、立体的で奥行き、面白みのあるスタイルになっていきます。
『ピノ・ノワールで表現力があるワインを造る為には全房である事が重要。その為には茎まで熟したカビのない健全な葡萄が必要。自分が納得できる葡萄しか使わない』
茎や果皮に微量に付着する酢酸菌やバクテリアが活動しやすい環境(茎付近の空気/遅い醗酵)があるのも事実で、弱い年には揮発酸が目立つことも。
『茎に含まれるカリウムは酒石酸と結合しやすく、酸度を下げる(PHを上げる)のでバクテリアが活動しやすくしてしまう。健全な葡萄である事が重要』
❖テロワールワイン❖
以前は馬での耕作のお礼に葡萄を貰っていました。今もその頃の造り手との特別な契約が残っていて、基本的に毎年同じ区画の葡萄を購入する事ができています。
『毎年同じ造り手の同じ区画を購入する事で、造り手の個性、畑、区画の個性を知る事ができる。その個性を意識して醸造する事がとても重要』
畑の個性を理解し、その個性を表現する為には多少のリスクは必要。揮発酸やブレットもそれが主体にならなければ味わいのアクセントになると考えます。
『欠陥の全くないテロワールワインは存在しない。土地の味わいを得る為の自然醸造では薬品を使うべきではないので自然界に存在する全ての要素が味わいを造るのだから』
■マルサネ・ロンジュロワ
柔らかくジューシーで尖ったところがなく、球体。石灰のシャープさよりも赤土のたっぷりとした質感がロンジュロワの個性。若い内からチャーミングで癒される味わい。
■ジュヴレ・シャンベルタン・ラ・ジュスティス
平野部ながら石灰の母岩が地中にある影響で骨格、ストラクチャーに優れています。果実のリッチさとテンションの高さがこのワインを1つ上のワインにしてくれます。
■モレ・サン・ドニ・アン・スーヴレイ
赤系果実の可愛らしさにリコリス、少しのスパイスが加わり、華やかで女性的。口中の滑らかさ、柔らかさはこの畑の太陽の多さを表現しています。