Lenoble ルノーブル
フランス France / Champagne
コート・デ・ブラン、グラン・クリュ・シュイィのオイリーさ
コート・デ・ブランで最もオイリーで肉付きのよいシュイィの個性を最大化
マグナムボトル(コルク栓)熟成のリザーブワインによる複雑性
❖新生ルノーブル❖
ルノーブルの起源は、第一次世界大戦中にアルザスから母方の実家であったシャンパーニュに逃げてきたドイツ系一族。1915年にはワインの販売を仕事として生計をたてていました。
『1920年、アルマン・ラファエルはシャンパーニュの生産を開始。終戦直後だった為、ドイツ系の名前を隠し、ARルノーブルと名乗ります。ARは自身のイニシャルでした』
自身のイニシャルとノーブル(気品)のあるワインを造るという意味を込めてARルノーブルとしました。当時からドイツ系の生産者は多かったのです。
『こうして100年以上、4世代に渡り、家族経営を続けてきたのがARルノーブル』
品質重視のシャンパーニュ造りで急成長を遂げたメゾンとして、フランス国内で一気に注目の的となりました。その地位を確かなものにした後、4代目のアンヌとアントワンヌ姉弟はひとつの決断をします。
『2023年に、シュヴァル・ブランのオーナーの1人でもあるフレール・ガリエンヌ家に売却を決めました』
父の代にも一度売却を画策したことがありましたが、断念。しかし、近年の地価高騰や資材費の高騰を受け、このままでは自分たちのスタイルでシャンパーニュ造りを続けるのは難しいと考えた姉弟は、メゾンの売却を決定。この際、ARの頭文字を取り、メゾン名をルノーブルと変更しました。チームも刷新されましたが、長年、栽培と醸造を経験してきた弟アントワンヌが引き続きメゾンに残り、ルノーブルの哲学とスタイルを継承していきます。
『これまで築いてきた伝統とクラフトマンシップの精神を守るために、変わる必要がありました。ルノーブルのシャンパーニュ造りを確かに未来に伝えていくための必要な変化』

❖生物多様性❖
アントワンヌはメゾンを受け継いだ1993年から畑の改革に着手します。優れたテロワールに畑を所有しているのに、それを活かしきれていないと感じたのです。
『父のワインは重く、表情に欠けていた。収量が多く、葡萄樹が土壌を表現できていない状態だった。畑の改良こそが、最も大変だが、やるべき作業だと考えた』
収量を抑える為に仕立を変更。枝を短く剪定し、葉の量を増やします。下草を生やし、葡萄樹に適度な競争環境を与え、ストレスをかけていきます。
『仕立を変更するだけで葡萄樹は弱った。葡萄樹自体にエネルギーが足りていなかった。肥料、一切の農薬の使用を中止し、葡萄樹を自然に戻していきます』
自然農法の導入だけでなく、畑の周囲に一定量の森を残し、葡萄以外の果実の栽培、花の栽培も開始。葡萄だけでない生物多様性を目指しました。
『更にシュイィでは蜜蜂の飼育も開始。葡萄樹の受粉にも貢献しながら、葡萄畑周辺の生物サイクルの最適化に貢献。そして、シュイィの葡萄の蜂蜜の生産も開始』
下草を刈るのは病気対策の時と収穫前1ヶ月で必要な時だけ。それ以外は自然に伸ばし続けます。グラン・クリュでは珍しい徹底した自然農法の畑となりました。
『ビオディナミには興味がない。生物多様性を維持し、自然のなかで葡萄を育てる。2012年にはHVE(Haute Valeur Environnementale)に認定された』
HVEは自然環境を維持する事を目的とする認証。有機認証とは違い、葡萄畑の周辺の自然環境までもが対象となる厳しい認証でシャンパーニュでは2社のみが認証されている。
『所有する畑はコート・ド・ブラン・グラン・クリュのシュイィを主体にプルミエ・クリュのビスイユ、高品質のムニエで有名なダムリィの3ヶ所で合計18ha』
ほとんどがコート・ド・ブラン・グラン・クリュのシュイィなので、彼等が使うシャルドネは全てがグラン・クリュ・シュイィ。ミネラリーでも厚みがあり、リッチな個性を強く表現しています。
❖マグナムボトル熟成リザーブワイン❖
伝統的コカールでの圧搾後、ステンレスタンクでの比較的低い温度での発酵。一部は大樽、古バリックでの発酵。全ては区画毎に出来るだけ細かく分けて醸造されます。
『200個の古バリック、9個の大樽とステンレスタンクに分けて区画毎で発酵させる事で色々な個性の原酒を造り出し、これをアッサンブラージュする事で奥行きを得る』
温暖化に対応し、近年では収量の半分程度をノン・マロラクティックで仕上げる。シュイィのオイリーさを引き立たせる為に、よりフレッシュで重くないスタイルに変化しています。
『グラン・クリュ・シュイィはリッチでオイリー。ブルゴーニュに例えるならムルソーの肉付き。このリッチさだけでは重いので、ノン・マロのフレッシュさや、真っすぐさが必要』
リザーヴワインも特徴的。そのほとんどはマグナムボトルに詰め、コルク栓をしてセラーで寝かせている。毎年、5,000本が詰められるので5年で25,000本が熟成中と言うから驚き。
『ボランジェは最高級キュヴェにマグナム熟成のリザーブワインを使うが、僕達はベースキュヴェに使う。ワインにより多くの要素を与える事を意識している』
1次発酵が終わったら極少量の酵母を足してマグナムボトルに詰める。こうすることで若干の発酵を促し、瓶内に二酸化炭素を充満させ、SO2無しで酸化から守っている。
『マグナムに入れコルク栓で熟成させるとボトル毎に違う個性のリザーブワインが完成する。これも多くの要素をワインに与える事になる。決して酸化的ではない』
「Mag」という文字が記載されているシャンパーニュにはマグナムボトル熟成のリザーブワインが使われています。以前より、明らかに深みが増しているのが感じられるはず。
『過度でなく、良いバランスの中でシュイィらしい肉付きのよさを活かしていきたい。料理と同じでオイリーであるからにはレモンのような爽やかさが必要なのです』

