Sagona サゴナ
イタリア Italia / Toscana
昔あったトスカーナの地酒の素朴さを味わえる
捨てられた葡萄畑をビオディナミで再生して地元に伝わる風習に倣って醸造
伝統的混植混醸から生まれるワインはサンジョヴェーゼの本当の美味しさを教えてくれます
❖ルイジ・ヴェロネッリとの出会い❖
アメリカ企業がブルネロに進出し、キャンティ・クラシコは白葡萄の使用を禁止。世界基準の味わいを目指しているようです。あのトスカーナの素朴なワインは消えてしまうのでしょうか。
『キャンティ・クラシコのような有名産地は世界基準のワインを造り、活性化しているが、その周辺の名も無い産地の地域に根差したワインは消滅の危機なのです』
ウンブリアに近いアレッツォ県、ローロ・チュフェンナ村は人口3,000人、村には2つのスーパーマーケットと1つのバールしかない過疎化が進む美しい村。
『キャンティ・サブゾーンに属しているので、昔はワイン造りが盛んだったが、若者はワイン造りに夢を持てず、フィレンツェに就職していった。農家は廃業するしかない』
かつては20軒以上のカンティーナと100軒以上の農家があったが、現在、ワインを造っているのはサゴナとジョコリの2軒のみ。葡萄畑は耕作放棄されています。
『この地域の生産者協同組合パテルナの醸造責任者として10年間働いていた。シンプルなこの地方の地酒のようなキャンティを造り続けてきた』
パテルナ協同組合での仕事を通してローロ・チュフェンナの土壌、気候、野生酵母まで経験し、学んだダニエレ・コロッティは、より理想のワインを造るべく、2012年独立します。
『理想のワインを造るなら農家になるべき。自然と共存する農業で健康な葡萄を育て、野生酵母で発酵。100年前のこの村のお爺さん達のワイン造りと同じ』
ソムリエをしていたダニエレが偶然会った故ルイジ・ヴェロネッリ。彼の話を聞き、土着品種とその土地固有のワイン造りに興味を持ってから20年。ダニエレの理想が遂に実現したのです。
❖窒素さえも自然に任せる❖
ローロ・チュフェンナ村から山を登った標高550mの荒廃した葡萄畑と1,800本のオリーブの樹を購入し、オステリアとカンティーナを設立。年産4,000本という小さなカンティーナ。
4,000本の生産量では生活できるはずもなく、兄妹でオステリアも経営。ワインと野菜、オリーブオイルは全て自家製。物々交換で貰った肉や魚を妹が料理しています。
ここには温暖化はありません。プラトマーニョ山の麓で標高550m。山から冷気が下りてくるので非常に冷涼。ゆっくり葡萄が熟すので収穫は10月中旬という遅さ。
『ローム土壌で砂質が多いので収量は多くなる。昔の人は収量制限をしなかったので高い品質のワインは造れなかったが、収量を抑えれば理想的なサンジョヴェーゼが出来る』
自然農法で葡萄樹に適度なストレスをかける事で自然と収量を落とす。ストレスから身を守る為に葡萄が蓄積する要素がワインに厳しさを与えています。
『4haの畑はビオディナミをベースとした自然農法で管理され、プレパラシオン、極少量の銅と天然の硫黄、海藻粉末のみが必要に応じて使われるだけ』
ローロ・チュフェンナの土壌の特徴は塩分、マグネシウム量が多く、痩せている事。窒素も少ないので雑草を残して時々刈り込むことで窒素量を増やしています。
『窒素が少ないと発酵が止まってしまうが、人工的に窒素を補給すると全体のバランスが壊れる。下草が自然と窒素のバランスをとるのを待つ事で葡萄樹は強くなる』
窒素や有機物が表土に少ないので、栄養を求めて根は下方向に伸びます。それによって、サブソイルである海の堆積物の層まで根が伸びているので彼等のワインはシリアスな味わい。
放棄されるローロ・チュフェンナの畑はテロワールが劣るのではなく、化学肥料の影響で根をサブソイルまで伸ばせず、テロワールを表現できないだけだったのです。
更に、イタリア全土で進む均一化とは反対に、この村の個性を際立たせる為、放棄された畑から枝を取り、古代クローンを接木し、独自のクローンを復活させています。
『トレッビアーノ5種。サンジョヴェーゼ5種のクローンを所有。カナイオーロ、チリエジョーロ、マルヴァジア・ネロ、コロリーノ・デル・ヴァルダーノも栽培している』
❖伝統的混植混醸❖
『カンティーナには北側に窓があります。発酵温度が上がり過ぎたら北の窓を開ける。山からの冷たい風が発酵温度を下げてフレッシュさを失わずに済む。これも先人の知恵』
収穫は遅く、10月中旬。砂質土壌は空気を含むので根を温めるが、標高が極端に高いので、夜間葡萄樹は冷やされて、適度なストレスを受ける。
『人間と同じように厳しい環境を耐え抜く事でしか葡萄は強くなれない。暖かいだけの環境では、だらけたワインになってしまう。エネルギーのない葡萄からは良いワインへ生まれない』
葡萄樹はストレスを受ける事により、グルタチオンやシステインといった物質を作り出すことが知られており、この物質はワインに厳しさを与えてくれるのだそう。
■プリミ・パッシ・ビアンコ
標高500mのマルヴァジアとトレッビアーノ。ステンレスタンクで発酵。マセラシオンは少しだけ。最後にマルヴァジアの苦味が味わいを締めてくれる。この地方独特の味わい。
■フォンフォン
樹齢の高いトレビアーノを果皮ごと漬け込んで醗酵したワイン。この地方の伝統ではないが、先人へのオマージュとして造っています。明るく柔らかいオレンジワイン。
■ガット・ロッソ
ワインは4種類。基本のガットロッソはサンジョヴェーゼを主体にトレビアーノ、マルヴァジアの白葡萄を10%混植した赤白ブレンドワイン。農民が昔飲んでいた日常のワインの再現。
■サゴナ
サンジョヴェーゼを中心にマルヴァジア・ネラ、カナイオーロ、チリエジョーロ、コロリーノが混植されている。セメントタンクで発酵。21日間マセラシオン。伝統的混植混醸。