Sandro Fay サンドロ・ファイ
イタリア Italia / Lombardia
ランゲとは全く違う。もう1つのネッビオーロ
東西に続くアルプス山脈の南側斜面に張り付く段々畑。標高で分割し、葡萄の個性に合わせたワイン造りが特徴。 マルコにとって葡萄の個性をそのまま表現するのが理想。
ランゲと全く違う土壌
1973 年にサンドロが実家のワイン造りを事業として本格化、設立したのが「サンドロ・ファイ」。 ヴァルテッリーナの歴史アール・エ・ペペの親戚にあたる一家で重要な畑を所有している。1998年には息子マルコ、娘エレナに引き継がれた。
『マルコはエリオ・アルターレやマコンのオリヴィエ・メルランで学び、保守的なヴァルテッリーナで独自の立ち位置を確立していく』
ヴァルテッリーナは珍しい産地。協会が完璧に機能していて45生産者全てが所属している。栽培方法や病害対策も共同で行っている。
『協会で決めた事は皆が守る。ビオロジック、ホルモン剤の採用、蒸気での除草。全て協会で決められ、全生産者が採用している』
東西に20km続くヴァルテッリーナはアルプス山脈の南側斜面に張り付くような段々畑が特徴。土壌はランゲとは違って石灰、粘土の比率が低い。
『泥灰土壌に砂が混じる土壌で、PH4.5~5.5とかなり低く、酸度が高い葡萄が収穫される』
ランゲの土壌のPHは7程度なので、比べるとかなり低い。エトナやガッティナーラ、カルソと似た土壌。ランゲとは正反対の個性になる。
『アルプス山脈を氷河が削り、湖がいくつもできた。 そこに溜まった泥灰土がこの地域の土壌の基盤になっている』
重要なのは標高
マルコが強く意識しているのは標高の違いによる葡萄の特徴を活かしたワイン造り。
■350m 以下の畑:ランゲと同じ位の標高だが、ヴァルテッリーナでは一番低い畑。問題は湿気と冷気の影響。
『夏の湿気は下部に溜まる。秋は冷気が下部に溜まるので葡萄の成熟に悪影響を与える』
彼等は低い畑をペルゴラ仕立にして日照量を確保。果皮が薄いので、湿気と冷気で収穫前に雨が降ると壊れてしまう。
『早目に収穫し、アルコールが低く、タンニンも強くない早飲みタイプに仕上げている。造り手のセンスや実力が試される』
■450~600mの畑:最高の日照量。芽ぶきも早く、成熟は時間をかけてゆっくりと進んでいく。
『果皮は十分に成熟するので厚くなる。タンニン、フェノール類の質が高く、葡萄の水分量も少ない。理想的なキアヴェンナスカ』
5 つのサブゾーンに分かれるヴァルテッリーナ。彼等はヴァルゲラとサッセッラに畑を所有。
『色々な大きさの段々畑を持つことも重要。小さい畑は乾燥に弱く、大きい畑は水分が溜まりやすいので葡萄が水膨れしやすい』
■600m以上の畑:日照量は多いが、標高が高過ぎるので下部と同じく冷涼。葡萄の成熟スピードは遅い。
『上部は湿気が無いので葡萄がカビに侵されることがなく、秋の雨に降られてもすぐ乾燥する。よって 陰干しタイプに向く』
最近では標高 850mの畑にシャルドネを植樹。寒暖差による引き締まった味わいの白ワイン造りにも挑戦している。
温暖化で注目の産地に
彼等の畑は全てビオロジックが採用され、硫黄は使うが、銅さえもほとんど使われていない。殺虫剤も使用しないので、毎年4月は段々畑の石段に卵を生み、葡萄樹の芽を食べてしまう虫ノエットを、夜間に手作業で取り除いている。
『除草剤も使用しない。下草は蒸気でボイルして成長を止めている。ヴァルテッリーナ全体が環境保全に取り組んでいる』
彼等の大きな特徴が10種類以上のキアヴェンナスカのクローン。一般的には病気に強い2種のクローンが栽培されるが、彼等は10種のクローを列毎に植えている。
『苗木屋には古いクローンは無かったので試験場に行き、譲ってもらった。発芽や収穫のタイミングが異なるので手間はかかるが複雑味を得られる』
ランゲでは温暖化が問題になっているがヴァルテッリーナは寒い。真夏でも40度になることはない。4000mのベルニーナ山からコモ湖に向かって吹きおろす冷気がヴァルテッリーナの個性を作っている。