Nicola Gatta 二コラ・ガッタ
イタリア Italia / Lombardia
シャンパーニュと同じ土壌から生まれる 酸化防止剤無添加スパークリング
フランチャコルタ特有のモレーン土壌ではなく、
シャンパーニュと同じ石灰岩盤を活かしたワイン造り
ナチュラルでも力強い葡萄を的確に醸造すれば偉大なテロワールワインができるはず
❖ナチュラルでも偉大なワイン❖
「アンドレア・アリチ」「カ・デル・ヴェント」とナチュラルで硬質なフランチャコルタが産まれている東フランチャコルタのグッサーゴ。山がちの小さなエリアには5軒のカンティーナがあります。
『グッサーゴに生まれてアンドレア・アリチとは同じ学校。実家はフランチャコルタのカンティーナ、ガッタ。グッサーゴの歴史、土地、気候の全てを体で知っている』
グッサーゴに誕生した6軒目のカンティーナが「ニコラ・ガッタ」。今、フランチャコルタで最も偉大なスパークリングワインを造ると大きな話題になっている、注目の人です。
『父親の影響で自然なワイン造りに傾倒。その後、シャンパーニュの友人やルカ・ロアーニャ等の影響を受けて、ナチュラルなだけでなく偉大なワインを造りたいと考え始めた』
破れたネルシャツと帽子。顎鬚は伸ばし放題で、野生児のようですが、ワインは1点の曇りもなく繊細。酸化防止剤無添加でも完璧な均整のとれた味わいで美しい。
『何かが突出しているワインは解りやすいが、未完成。土地の個性をワインとして表現するには均整のとれた味わいであり、何か1つの要素が個性を覆い隠してはいけない』
濃密なエキス感、旨味。グッサーゴらしい垂直性、冷涼感あふれる酸味。フレッシュで躍動感のある味わいはフランチャコルタの、どの造り手とも似ていないのです。
『ワイン造りは人、土壌、気候の全てが揃わないといけない。葡萄を形作る個性的な土壌と気候。自然を尊重して真摯に働く人。経済よりも品質を優先できる人が重要』
父、マリオはマリオ・ガッタとしてもワインを造った一方、農学博士でパオロ・ベア等の畑を作った人。父のワインは畑中心だったが、ニコラは醸造に関しても強い拘りを持ちます。
『ビオディナミで活性化した畑から採れた葡萄を野生酵母での醗酵。酸化防止剤無添加で瓶詰め。最も自然なワイン造りだが、それだけでは駄目。クリーンであるべき』
果皮に付着した野生酵母だけで発酵させている造り手は、ほぼ存在しないが、ニコラは野生酵母のみ。ノン・フィルター、清澄もなし。更に基本的に酸化防止剤も無添加。
❖グッサーゴの特殊性❖
モレーン土壌が主体のフランチャコルタですが、グッサーゴは1億5,000年前の石灰岩盤土壌の上に薄く赤土がのっている土壌でモレーンは一切ありません。
『グッサーゴは海底が隆起した石灰岩盤が浸食されずに残っている。微生物の死骸と牡蠣の貝殻を起源とする方解石結晶粒で、シャンパーニュと同じ低いPH』
シャンパーニュに近いが、コバルトや石英。更に鉄分を含む赤土が石灰岩層の間に入っているのはグッサーゴだけの個性。一般的なフランチャコルタとは全く違うのです。
『モレーン土壌は100万年前の若い土壌で湖や川由来。グッサーゴの石灰岩盤は1億年前以上の古い層が隆起した土壌なので、より土壌にミネラルが溶け出している』
標高は300mから700m。畑は7ヶ所に分かれて合計5.5ha。全て山の斜面にあり、アルプスの冷たい風を受けて乾燥するので病気も少ないのです。
特異な土壌。冷涼な気候と非常に多い日照。雨は多いが、アルプスからの風が湿気を乾かし自然な葡萄栽培が可能。これこそがグッサーゴのテロワールなのです。
『畑ではビオディナミが採用され、森を残し、違う植物を植え、鶏や羊を放して生物多様性を確保。除草剤も有機肥料も使用しない。銅と硫黄のみ極少量使うだけ』
年により発生するウドンコ病にはフェンネル油やイラクサの抽出液で対応。硫黄の使用も最小限に抑えています。銅は年間0.5g/ha以下の極少量しか使いません。
『土壌はフランチャコルタよりもシャンパーニュに似ている。この土壌をビオディナミで活性化させ、正しい醸造で何も加えず、何も隠さずに表現する事が正しい自然なワイン造り』
シャンパーニュのような硬質さだけでなく、エキスの濃密さや広がりの大きさ、余韻の広がりはグッサーゴだからこその個性と言えそうです。フランチャコルタともシャンパーニュとも違うのです。
❖ピュアさと正確性❖
カンティーナはグッサーゴの山頂付近。マリオ・ガッタの建物を使用。小さなセメント醗酵槽とバリックのみのシンプルな設備。ポンプも使用しないで重力を利用します。
『低いPHの石灰質の葡萄、冷涼な気候のお陰で一般的なフランチャコルタより2週間遅く収穫しても高い酸度が得られる。完熟しても酸度が確保出来る事が重要』
8月中旬に、まだ青い未熟な葡萄を収穫して酸度を確保するのが普通のフランチャコルタ。これではニコラ・ガッタのようなエキス感や旨味は得られるはずもないのです。
『葡萄が持つ要素が多いので除梗せずにダイレクトプレス。古樽で発酵させる。マロラクティックもブロックしない。そのお陰で青くない質の高い酸味を持っている』
1次醗酵後、長く樽でシュール・リー熟成する事でワインとしての複雑性を増してからティラージュ。2次醗酵を行い、そのまま最低でも30ヶ月以上熟成させます。
『父のワインは、もっと酸化的で樽熟成期間が長く、フレッシュさや土壌由来のミネラルが背骨ではなかった。僕は土壌を、より強く活かして、フレッシュで垂直性のあるワインにしたい』
葡萄の樹齢が高く、ビオディナミで強い葡萄であり、収量を十分に制限すれば葡萄は強くなる。酸化防止剤を使わないでもバクテリアに侵される事もない。
『リザーブワインは「ペルペトゥオ」というソレラのような手法で毎年、少しずつ継ぎ足して熟成させている。既に15年以上続けているので深みが出ている』