Chateau Yvonne シャトー・イヴォンヌ
フランス France / Loire
歴史的セラー、シャトー・イヴォンヌを継承
クロ・ルジャール夫人フラソワーズ・フコーが10年かけて再生した畑から
最もソーミュールらしい純粋なシュナン・ブランを醸す
❖クロ・ルジャール夫人❖
1600年代、シトー派の僧侶達がロワールに到達。フォンテヴロ・ラベイに教会を建て、ワイン造りを広めます。その隣町、パルネは優れた気候条件だった為、葡萄畑が開墾されました。
『当時のシトー派の僧侶が所有していた荘園がシャトー・イヴォンヌ。ソーミュールでも歴史的な優良畑を所有していましたが、徐々に衰退していきます』
第1次世界大戦で当主が戦死した事で、この荘園はしばらく歴史から消え去りますが、1817年には熱意ある醸造家によって復興されました。
『1997年、この素晴らしい荘園を再生すべく、クロ・ルジャールの奥さん、フランソワーズ・フコーがビオディナミを導入し、11ha28区画の再生を開始する』
フランソワーズはクロ・ルジャールと同じ手法で畑を再生、葡萄樹の自然治癒力を高めていきますが、その膨大な時間にオーナーは理解を示さず頓挫してしまいます。
『ビオディナミの導入は簡単ではない。自然治癒力のない農薬に頼りきった葡萄樹は一時期弱ってしまいます。自然治癒力を得るまでが長く、大変なのです』
放棄されたシャトー・イヴォンヌを救ったのが、フランソワーズとも仲が良かったマチュー・ヴァレ。ブルグイユのドメーヌの息子で醸造学を学び、独立を目指していた時でした。
『フランソワーズによる10年間のビオディナミによる努力で葡萄樹は生命力を取り戻し、自然治癒力を高めていた。イヴォンヌは、かつての力を取り戻していたのです』
フランソワーズはビオディナミだけでなく、古い樹を残し、最適の仕立てに整形し、収量を抑え、マッサルセレクションで良いクローンが選抜されています。
『フランソワーズ・フコーと先代へのオマージュとしてシャトー・イヴォンヌの名前を残す事を決定。3haのシュナン・ブランと8haのカベルネ・フランの畑を引き継ぎます』
畑は30以上の細かいパーセルに分かれ5つの村にまたがります。歴史的な畑ラ・コーテはパルネの村のロワール川を見下ろす北斜面。チョーク質の畑ブレゼ等個性的な畑ばかり。
『表土は粘土石灰だが、ロワール川に近い場所は砂質になる。母岩はトゥーフォなので酷暑でもスポンジのように水分をしっかり蓄え、葡萄樹は守られる』
❖自然に悪い事はしたくない❖
畑は自家製調剤、ハーブ類、海藻と極少量の銅と硫黄のみが使われます。2012年からはビオディナミが導入され、葡萄樹は強くなっているので将来的には何も使わないつもりだそう。
『雑草は時々、足で踏み倒し、自然と枯れて土に戻っていくのを待つ。シガリエ(害虫)にはエスカルゴで対応。ウドンコ病にはスギナを煮出したお茶で対応する』
ここ数年、問題になっている遅霜。多くの造り手は畑の中でガソリンを燃やして霜から葡萄樹を守ろうとしていますが、マチューはこれが好きではありません。
『ガソリンを畑で大量に燃やす事は果たして正しいのだろうか?造れるワインの量は増えるかもしれないが、自然環境に良いはずがない。自然のお陰でワインが造れるのに』
遅霜対策にガソリンを使わないマチューは冬の剪定の時期を遅らせる事で開花を遅らせ、遅霜の時期に若芽が死滅させられないように調整しています。
更に、剪定時に普通は霜で失う分、長く枝を残して発芽する芽を多くしておく事が普通ですが、マチューは最低限まで短く剪定してしまいます。
『冬の剪定の段階から芽を少なくしておけば、葡萄樹の栄養は、より少ない芽に集中するし、成長も安定する。霜が無かった時には質を落としてしまうのは良くない』
30以上あるパーセル毎に色々なクローンのシュナン・ブラン、カベルネ・フランを所有。クローンを均一化しない事で、収穫時期もずれて仕事は複雑になってしまう。
『シュナン・ブランには20種類以上のクローンがあるが、土地に根差した元々あるクローンをマッサルセレクションで残していく事が土地の味を守る事に繋がる』
イヴォンヌの平均収量は20~25hl/haと、この地域の平均収量の半分程度。それだけ凝縮した力のある葡萄からワインを造る事を重要視しているのです。
❖よりピュアである為に❖
栽培はフランソワーズの頃と何も変えていません。しかし、醸造面では少しずつ変化しています。栽培は出来る限り自然に戻りたいのですが、醸造は進化すべきなのです。
『以前は100%新バリックでしたが、今は古バリックとフードル。更に一部ではアンフォラも導入。より透明でピュアでありたい。削ぎ落したようなワインを目指す』
フードルは目が細かく硬く、厚みがあって酸素透過率が少ないオーストリア製ストッキンガーを採用。タンニンも香も与えないのとバリックよりも、酸化が緩やか。
『地下セラーは16世紀に掘られた天然のトゥーフォの中にあり、1年を通じて、一定の温度、一定の湿度をキープしてくれるが、少し寒過ぎるので発酵が止まる事も』
発酵は全て野生酵母のみで行われます。補糖も補酸も行いません。ソーミュールの純粋なミネラル、垂直性、硬質感、そして圧倒的な凝縮感を感じるはずです。
『歴史的産地、ソーミュールの歴史的畑を復活させたマチュー。その畑のポテンシャルは非常に高く、既にソーミュールの偉大な造り手、3人に数えられるようになりました』