Vini Scirto ヴィーニ・シルト
/ Aosta
人気産地になる前の祖父のエトナワイン
祖父が残した樹齢100年越えの古い畑を修復
エトナDOCを目指すのではなく、祖父の造っていたワインを目指す
❖祖父の畑を修復❖
世界中から注目を集めるエトナ。大手、ドンナフガータやプラネタも進出、アンジェロ・ガイアもイッダを設立し、人気ワイナリーが目白押しとなっています。
『エトナで生まれ、エトナの葡萄畑で育ちました。エトナが注目される前、祖父はこの地で葡萄やオリーブ、ピスタチオ、野菜を栽培する農家でした』
ジュゼッペ・ルッソの従妹であるヴァレリアとパッソピッシャーロに生まれたジュゼッペ・シルトが結婚し、2010年に始まった小さなカンティーナがヴィーニ・シルトです。
『2005年に祖父、ドン・ピッピーヌが亡くなり、彼が手入れしていた葡萄畑は荒廃。2009年にジュゼッペの父が売却を検討し始めます』
30年前のエトナは今のような人気産地ではなく、祖父はフェウド・ディ・メッツォで一切農薬も使わずに葡萄を育て、野生酵母のみで自家製ワインを造り、バルクで売っていました。
『パッソピッシャーロのフェウド・ディ・メッツォにある古い樹齢の畑は周囲の造り手が羨む条件。高値で売れる事は解っていましたが、祖父との思い出の畑は手放せませんでした』
当時、カラブレッタで働いていたジュゼッペは父親を説得して畑を相続。ヴァレリアと共に荒廃した葡萄畑を修復していきます。祖父がやっていた手法をそのままに。
❖醸造を学んだ経験なし❖
『夫婦2人だけで栽培から醸造まで全てを手掛けるガレージワイナリー。醸造所は廃ビルの1室を改装して使用。最小限の亜硫酸しか使わないでワインを醸します』
彼等はエトナに畑を持ちながら、エトナを名乗りません。祖父の頃の自然な手作りのエトナワインこそが自分達の理想。エトナの法規制を優先する必要はないのです。
『2人共、醸造を学んだ経験はありません。祖父の栽培、ワイン醸造を再現するだけ。化学薬品も培養酵母も知らなかったのが良かったのかもしれません』
祖父のワイン造りは農民の知恵でした。葡萄を食べて収穫時期を判断し、肌で発酵温度を感じ、発酵の状態を知ります。醸造学は必要ありませんでした。
『唯一働いたカラブレッタのワイン造りはエトナでも特殊で、古典的バローロを醸すような醸造でした。ネレッロ・マスカレーゼの表現力を学びました』
温度管理をせず、野生酵母のみで発酵。衛生管理はしっかり行い、還元状態を維持しながら熟成。良い状態になったらノン・フィルターでボトリングというシンプルなワイン造り。
『今のエトナワインを目指しているのではなく、祖父の造っていた農民の自然なワインをエトナで造っています。エトナDOCである必要はありません』
何度かエトナDOC協会にサンプルを送ってみましたが、認可されませんでした。認可を目指すより、自分達のやりたいワイン造りをするべきだと思うのです。
❖プレ・フィロキセラも❖
全部で4haの葡萄畑を所有。その他に1haのオリーブ、レモン、ピスタチオの畑を所有。葡萄樹は1900~1930年に植樹されています』
畑は祖父の時代から一切の農薬が使われず、自然農法で管理されていました。祖父にとっては普通の事であって、特別な事ではなかったのです。
『樹齢は100年を超える区画も多く、伝統的アルベレッロ仕立。祖父は葡萄樹の樹液流動がスムーズにいくように仕立ていました。これも農民の知恵なのです』
ネレッロ・マスカレーゼを主体にネレッロ・カプッチョ、カリカンテ、グレカニコ、ミネッラ等の品種が混植されている昔ながらの畑。自家製のコンポスト以外は何も与えません。
『パッソピシャーロ村にあるフェウド・ディ・メッツォとポルカリアは標高600mで北向き斜面。古い年代の火山岩が風化して黒い砂状になった土壌』
■フェウド・ディ・メッツォ
樹齢100年を超すプレ・フィロキセラの葡萄樹が多く残る。彼等の所有区画は火山岩土壌だが他の畑と大きく違い、軽石が多く、ミネラル分が豊富。
『ネブロティと呼ばれエトナの北にある山脈からの風と海からの風が一日中吹いていて、乾燥している為、銅や硫黄のトリートメントも必要ない』
ここでは、ネレッロ・マスカレ―ゼ、ネレッロ・カップッチョの赤品種に加え、10%程白品種(カリカンテ、カタラット、グレカニコ、ミネッラ等)を混植しています。
■シャラノオヴァ
ランダッツォ村の標高700mに位置するコントラーダ・シャラノオヴァは樹齢約60年の優良畑。パッソピシャーロやプラネタも畑を購入している注目の畑。
■ピラオ
ランダッツォ村の標高1,000mを超すコントラーダ・ピラオは樹齢60年を超える区画で火山岩由来の砂質で地中に火山岩が多く、表土が薄いのでロゼを造る。
■タウタラーチ
標高1,000mのコントラーダ・タウタラーチは標高が高過ぎてエトナを名乗れない地域、プロンテ地区にありますが、この畑に大きな可能性を感じています。
『タウタラーチは何度かの噴火を経験し、火山岩の層が厚く、表土は風化した砂質ですが、地中には火山岩があり、保水性に優れ、乾燥から守ってくれるのです』