Il Paradiso di Manfredi イル・パラディソ・ディ・マンフレディ
イタリア Italia / Toscana
海の潮っぽさとヨード感は北モンタルチーノの個性
1950年からグエッリーニ家に伝わるお婆ちゃんの知恵を活かしたワイン造り
国際化するブルネロで最も伝統的で家族的なワイン
❖ブルネロらしさ❖
『2011年のイル・パラディソ・ディ・マンフレディのブルネロはブルネロらしくないとの理由で協会にDOCGを認めてもらえなかった。海に由来するヨードっぽさがその理由』
1950年、亡き奥様の父親がパラディソと呼ばれる畑を購入したのがイル・パラディソ・ディ・マンフレディの始まり。以来、家族のみで年間8,000本弱のワインを醸しています。
『1967年には10軒のカンティーナと共にブルネロ・ディ・モンタルチーノ協会を設立。その創設メンバーでもあった。モンタルチーノの歴史的カンティーナなのです』
現当主はフローリオ・グエッリーニ。2人の娘、ジョイアとシルヴィアの3人で毎日、畑に出て昔からグエッリーニ家に伝わるワイン造りを今も、そのまま実践しています。
『元々は数学教師をしていたが、妻の実家に入り、カンティーナを引き継ぐ事に。醸造は学んでおらず、義母の肌感覚でのワイン造りを引き継ぎました』
2015年、義母のフォルトゥナータお婆ちゃんが亡くなった事で、娘のジョイアが本格的にワイン造りに参加。午前中は老人ホームで働き、午後は畑仕事をするようになります。
『葡萄の収穫時期は蜜蜂が教えてくれる。発酵の健全さはセメントタンクに頬を付けて自分より低い温度を感じれば良い。発酵が終わるのはパンのような香が教えてくれる』
ここでは一切の醸造技術は使われません。全てお婆ちゃんの知恵と感覚。今もその知恵でワイン造りが行われているのです。昔のモンタルチーノが、ここには残っているのです。
『モンタルチーノ北斜面は海底の堆積物が隆起した海のミネラルを含む土壌。この土壌の要素を取り込んでヨード的な味わいになったブルネロを協会が認めないのは間違っている』
外資が流入し、世界的嗜好に変化するブルネロ。本当のブルネロとは何なのでしょう?1950年から変わらない彼等のブルネロこそが本来のブルネロなのではないでしょうか。
❖ヨードと潮っぽさ❖
畑はモンタルチーノ北斜面、町のすぐ下にあるモンタルチーノの発祥の地。アンモナイトや牡蠣、帆立の貝殻を多く含む粘土質で下層土は今でも潮の香がします。
『7つの段々畑に分かれていて、それぞれ表土の色が違う。白い土壌は砂を多く含み川の影響を受けている。赤土はモンタルチーノの南部と似ている土壌』
異なる表土の下には海の堆積物が押し固められた岩盤があり、多くの化石を含んでいます。この層まで葡萄根は伸びているので、彼等のワインには強いヨード香を感じさせるのです。
『海に由来する岩盤層があるのは、この周辺だけ。他のブルネロは赤土で海の要素はない。この土壌を活かしてワインを造れば一般的なブルネロとは違う個性になるのは当然』
土地の個性をワインに移していくのがワインで、それを法制化したのがDOCGなのに、ブルネロのイメージを後から作り、それに合わせてワインの個性をコントロールするのは間違っている。
『畑では一切の化学薬品を排除。猪、鹿対策は石鹸を吊り下げ、人間がいるかのように思わせます。ネギ、ルッコラ、ニンニク、ミント、チポッラが自生する美しい畑』
害虫対策には天敵の益虫を放して対応。除草剤も防虫剤もホルモン剤も使用しません。周辺には森を残し、生物多様性を確保。自然の中で共存する畑を目指します。
『畑の表土には無数の穴がある。これは地中に巣を作る蜂が沢山いる証拠。蜂がいない畑は自然な畑ではなく、葡萄樹のエネルギーは足りていません』
葡萄は太古の時代から形を変えずに今も生き残っている数少ない果実。自然界で生き残る強いエネルギーを持った植物なのですから、それを弱めてはいけないのです。
『下草が多いので葡萄の根は横ではなく、下に伸び樹齢5年を超すと岩盤の割れ目に根を伸ばし、その下にある水分を吸い上げる。葡萄樹は生命力に溢れています』
❖家に伝わる知恵のワイン造り❖
『収穫時期は糖度計には頼りません。葡萄の植物的完熟を待って収穫する事でエネルギーを最大化させます。葡萄の完熟は蜜蜂が教えてくれます』
収穫後、畑ごとに分け、ジュリオ・ガンベッリも愛した伝統的セメントタンクで発酵。温度管理なしの野生酵母のみでの発酵。厚みのあるセメントタンクなので温度が上がりすぎる事もない。
温度が高過ぎる場合はワインを撹拌し、ドアを開けて自然に温度を下げる。それ以外の人為的介入は一切なし。酸化防止剤も含め何も添加しません。
『頬をタンクに付け温度を感じ、音を聞いて酵母の状態を感じる。匂いを嗅いでパンの香がすれば発酵終了。重力のみで下の熟成庫にワインを移す』
発酵終了後、1度デキャンタして不純物を取り除き、スラヴォニア産の大樽に入れて熟成。入口に近い小さめの大樽は気温が高めなのでロッソ・ディ・モンタルチーノにする。
『協会が5ツ星評価をした年はリゼルヴァを造ります。5つある大樽の中から試飲で最も優れているワインを選定し、樽熟成期間を1年間延長します』
世界的人気のブルネロ・ディ・モンタルチーノ。イタリアで最も国政的な産地とも言われます。本来のモンタルチーノの味わいとは何なのでしょうか?
『土地の個性を吸い上げ、そのエネルギーを蓄えた葡萄果実をワインにしていくべき。土地のエネルギーを宿したワインにはエネルギーがあり、土地の味がするのです』