Frascole フラスコレ
イタリア Italia / Toscana
キャンティ・クラシコにはない『ルフィナ』の個性
ジュリオ・ガンベッリと共に働き、その後オルネライアのエノロジストとして働いていた「フェデリコ・スタデリーニ」が醸造 責任者を務める。ルフィナらしい鉄っぽい味わいが特徴的。
キャンティ・クラシコと異なる個性
キャンティ・クラシコの北東、ディコマノの町、「ムジェ ロ山脈」の南端、標高 500m 以上の高地に位置する のが「キャンティ・ルフィナ」。 「ルフィナ」の最北に位置するのが「フラスコレ」。20 軒もない「キャンティ・ルフィナ」の造り手の中で近年 急速に評価を上げている。
『ルフィナは山のワインでクラシコとは全く違う。冷涼 なので葡萄が熟すのに時間が必要。ワインは硬質で 鉄っぽい。梅のニュアンス』
当主は「エンリコ・リッピ」と「エリザ」夫婦。彼等はこの 地でワイン造りだけでなく農作物の栽培、アグリツーリ ズモの運営を行っている。
『エトルリア時代の文献に既にフラスコレの葡萄畑が 記されている。クラシコよりも早くから葡萄栽培が行 われていた歴史ある産地』
キャンティ・クラシコが「ルフィナ」より優れているのは 完熟度。年間を通して気温が 5 度程度低い「ルフィ ナ」ではクラシコほどボリューム感は出ない。
『ルフィナの引き締まった垂直性のある味わいは独 特。クラシコが地表より上、太陽のワインだとすると ルフィナは地中、山のワイン』
8,500ha のクラシコは海外資本が入り、活性化され た。2006 年には白葡萄を使用禁止するなど品質向 上にも取り組んでいる。
『ルフィナは田舎の産地。未だに白葡萄も混植され ているし、近代醸造は導入されていない』
キャンティの 7 つのソットゾーナで最も小さい「キャン ティ・ルフィナ」。800ha に造り手は 20 軒もない。
ジュリオ・ガンベッリ、オルネライア
彼等の評価は近年一気に上がった。温暖化で「ルフ ィナ」が注目されたのと、新任の醸造責任者「フェデリ コ・スタデリーニ」の影響が大きい。
『フェデリコはオルネライアの前エノロジスト。その前 はポッジオ・ディ・ソットでジュリオ・ガンベッリと共に働 いていた。サンジョヴェーゼの専門家』
「ルフィノ」で骨格のしっかりしたワインを造る必要はな い。標高の高さを活かした硬質感があって伸びのあ るワインを造りたい。 畑では一切の化学薬品は不使用。銅と硫黄のみで 対応。 醸造に関しては 2006 年まで使用していたステンレス タンクでの発酵を中止。小型のセメントタンクで区画 毎の発酵に切り替えた。
『発酵は野生酵母。ステンレスは発酵期間が短くな るので個性が出難い。区画毎に小さなセメントタン クで発酵させてアッサンブラージュする』
年によるが硬過ぎることが多い「ルフィナ」は 3 回程 度移し替えをすることで酸素と接触させて開かせるよ うに変更され、早目に開くようになった。 パッソ・デル・ブラリオーネ山(1600m)とムジェッロ丘 陵がぶつかる場所にある彼等の畑は特殊。 急斜面の中で唯一、扇状に広がっていて朝日を最 初に浴びる。また、日没直前まで夕日を浴びる。
『標高は 550m で土壌はシスト(片岩)。この土壌は パンツァーノと似ているが、より砂質が強く、地中深 くまでいかないと水分を貯める粘土質がない』
葡萄樹にとって、より厳しい環境。適度のストレスを受 けながら地中深くまで根を伸ばすので地表の樹の成 長は遅く、樹齢 50 年でも細い。
新たな挑戦と自由な発想
彼等の畑は樹齢の高い樹が多い。一気に植え替え ることはしないで、少しずつ植え替えし、全体のバラン スを取っている。
『一番低価格のトスカーナ・ロッソ・ビトルニノの畑の 平均樹齢は 50 年。トレビアーノが混植された昔なが らの畑で密植されていないから』
■キャンティ・ルフィナ 「キャンティ・ルフィナ」は色々な畑のブレンド。腫瘍の 畑は 1970 年に植樹された。
『クローン名も解らない古いサンジョヴェーゼが残る 畑が多い。古い畑なので密植されてなく、2800 本 /ha。新しい区画は 6000 本/ha』
「ルフィナ」らしい硬質感。垂直性のある味わい。クラ シコとは違う個性を味わえる。
■キャンティ・ルフィナ・リゼルヴァ 泥灰土(マール)と「シスト」が混じる畑で標高は 550m で周囲は森に囲まれている。猪の被害が大き い畑。1999 年よりビオロジック。
『一番古い樹は 1967 年に植樹。F9, CH22, Tin 10, Tin50 と色々なサンジョヴェーゼのクローンとコロリー ノが混植されている』
収穫は 10 月後半とかなり遅い。100%除梗、18 日 間のマセラシオン。マロラクティックが始まる前に古バ リックに移して 1 年間熟成。
■ヴィンサント 1967 年に植樹されたトレビアーノとマルヴァジアの混 植された畑。クローンも判別できていない。標高 500m と高過ぎて通常の白ワインは造れない。
『9 月中旬まで収穫を待つ。自然風で 2/3 まで乾燥 させる。にプレスして発酵。前年のヴィンサントを足 すことで発酵を促す』
発酵は2~4年続く。酸化防止剤は使用しないので、 自然に発酵が止まるのを待つ。
『発酵・熟成は短くても9年間。糖度の調節はしない のでヴィンテージによって糖度が変わる』
≪キャンティ味わい比較≫
「ルフィナ」らしい硬質感。標高の高さから梅や鉄っぽ さ。日照条件の良さから果実味を得ている。垂直性 のある味わいだが早くから楽しめる。 グリルなどシンプルな肉料理にはクラシコ以上に良い 相性。胡椒、マスタード、燻製とも好相性。