La Raia ラ・ライア
イタリア Italia / Piemonte
ビオディナミ+現代醸造で進化する『ガヴィ』
低迷するガヴィの中で一気に評価を挙げている造り手。循環型エコシステムの中でビオディナミを実践。新しい形の カンティーナとして精力的に品質向上に取り組んでいる。
ファッソーネ牛と有機栽培
2007 年、イタリアでは 38 カンティーナしか取得して いない自然環境保全認証団体「デメテル」の認証を 取得した「ラ・ライア」。 オーナー「ジョルジョ・ロッシ・カルロ」が 130ha の大 農園を取得したのが 2003 年。 以降、ビオディナミを実践し、古代「モノココ麦」の復 活、「ファッソーネ牛」の放牧、栗、アカシアニワトコの 森、そしてワイン造りを行ってきた。
『有機野菜やファッソーネ牛の飼育でこの地域を復 興させたい。その為に自然と共生する教育を行うシ ュタイナー学校も運営している』
畑ではビオディナミの思想に基づき、銅と硫黄、そし てプレパラシオンだけしか使わない。
『ワイン造りは農業の 1 部として行っている。ガヴィ は今や廃れてしまった。収量を重視した栽培で質を 落としたからだ。ビオディナミで収量を落とし、健全 なコルテーゼを収穫することが重要』
地元の伝統を復活させるのが彼等の目的。彼等の 新しいカンティーナは「ピセ」と呼ばれるこの地域の 伝統建築が採用されている。
『地元の粘土と小石、干し草を使ったピセと呼ばれ る伝統的な土壁。伝統を絶やさない為に建築もワ イン造りも進化しなくてはいけない』
醸造技術は進化する
一方、カンティーナの中は温度管理付ステンレスタ ンクが並び、「グラヴィティシステム」の採用など最新 の技術が揃っている。
『コルテーゼは酸化に弱い品種。最適なタイミング で収穫し、迅速に醸造しないとコルテーゼ本来の香 は表現できない』
植樹率 4,500 本/ha。収穫はベースの「ガヴィ」も全 て手作業で行われる。果皮が破れると酸化が始ま るのでコルテーゼは手収穫しかできない。 酸化によって品種由来の香は無くなってしまう。朝 の気温の低い時間帯に収穫、温度を上げずに圧搾。 ステンレスタンクに投入される。この段階で亜硫酸 は使わない。
『コルテーゼは低めの発酵温度が重要。香が飛ばな いようにする。発酵後は 3 ケ月シュール・リー。長す ぎるとコルテーゼの香をマスクしてしまう』
発酵は 17 度から始め徐々に上げていく。28 度を超 えることはない。ヴィンテージにもよるが 20~25 日 程度の発酵期間。 シュール・リー後は1回デキャンティングして粗いフィ ルターに通してボトリング。窒素を使って酸素と触れ 合わないでボトリングできるようになっている。
『一般的なガヴィの平均樹齢は 15 年程度。僕等の 畑は最も古い樹齢は 70 年を超す。一部には自根 のコルテーゼも残っている』
樹齢 60 年の樹からは「ガヴィ・リゼルヴァ」が造られ る。「ガヴィ」でリゼルヴァを造るのは非常に珍しいが、 古い樹ならではのスモークのような香が楽しめる。
ガヴィの可能性
ピエモンテを代表する白ワインなのに一時期のソア ヴェのように衰退してしまった「ガヴィ」。組合による 買取り葡萄で造られた低品質大量生産「ガヴィ」は 同じワインで色々なラベルで販売されている。
『コルテーゼは酸化に弱い品種なので、そもそも大 量生産に向かない。大量生産を可能にするのが亜 硫酸だった』
機械収穫をすると腐敗果は混じってしまう。葡萄果 も破裂するので果汁が流れ出し、酸化が始まる。 よって亜硫酸を使ってバクテリアの繁殖や酸化を止 めなくてはいけない。
『同時に亜硫酸はコルテーゼの品種由来の香を奪 ってしまう。ガヴィの個性は表現できないのでガヴィ の評価は下がっていった』
彼等の「ガヴィ」はコルテーゼの香がある。
■ガヴィ・リゼルヴァ 「マドンニーナ」の丘の上にある樹齢 70 年を超す畑 の葡萄のみ。発酵後、6ヶ月ステンレスタンクで熟成。 瓶詰め後、6 ヶ月瓶熟成。
『リゼルヴァを造っている造り手は今ではほとんどい ない。樽には入れていないが樽、ナッツのような香 が出てくる』
■ガヴィ・ピセ 標高 400m の「ラ・カッシネッタ」と呼ばれる樹齢 70 年を超す畑。自根のコルテーゼも含まれる。
『収穫は一番遅く 9 月第 2 週。完璧に熟した葡萄 のみを低温発酵。12 ヶ月間シュール・リー。12 ヶ月 間熟成した後に出荷』