Valter Mattoni ヴァルテル・マットーニ
イタリア Italia / Marche
壁作りが本業でワイン造りは趣味
祖父の畑を使って趣味でワイン造りを始めた。「オアジ・デリ・アンジェリ」「レ・カニエッテ」等と共にワイン造りを勉強し、 規定外のワインばかりを造っている。
土木兼業カンティーナ
マルケ州の最南端「カストラーノ村」。粘土の質が高く、 古くはレンガ用の粘土の採掘場があった村で現在の 人口は約 500 人。 「ヴァルテル・マットーニ」はこの村に代々住んでいて 名字の「マットーニ」は方言でレンガの意味。先祖はレ ンガ造りで生計をたてていた。
『祖父の代までは自家製のワインを造って家族で楽 しんでいた。祖父も父も水を一切飲まなかった。昔 の農民はワインしか飲まなかった』
90 年代に入ると高齢で祖父は畑を放棄してしまう。 身近だった畑が荒れていくのは辛かった。 壁や床造りの職人として働いていた「ヴァルテル」は 趣味で畑を再生。ワイン造りを始める。 醸造学校で勉強していない彼は、当時まだ無名だっ た「レ・カニエッテ」の当主「ジョヴァンニ」や「オアジ・ デリ・アンジェリ」当主の「マルコ」と共にグループを作 り、趣味で栽培や醸造を学んでいった。
『祖父のワイン造りは家庭料理のレシピみたいなも のだった。だが結局はそれが一番正しいワイン造り だと気がついた』
1997 年、無名だった「オアジ・デリ・アンジェリ」が「ク ルニ」でガンベロ・ロッソ 3 ビッケーリを獲得し、一気に 人気となっていく。
『クルニは僕等にとっては地酒だった。それが世界中 で人気になった。信じられなかった。ワイン造りを本 格的に始めるきっかけになった』
「ヴァルテル」は「オアジ・デリ・アンジェリ」の成功に触 発され、遂に 2000 年自らのカンティーナ「ヴァルテ ル・マットーニ」を設立。 5ヶ所に分かれる 2.5haの畑と醸造所は床材の倉庫 の一部を改装して始まった。
古いクローンを植樹
祖父の畑は商売ではなく、自分達の為の畑だったの で科学薬品は一切使われていなかった。土壌は鉄 やマグネシウムを多く含む粘土質で肥沃。 標高は 280m。海と山に挟まれた土地で海の暖かい 風と山の冷気が葡萄に適度なストレスを与える。
『マルケには古いクローンが残っている。それを見つ けてマッサルセレクションし、良いクローンを何種類 か移植していく』
白葡萄は樹齢 60 年の「トレビアーノ」を残し、更にピ エ・デイ・フランコの「トレビアーノ」の畑からマッサルセ レクションで移植した。
『マルケでは 60 年代までは糖度補充の為にトレビア ーノが植えられていた。今ではほとんど残っていない がポテンシャルは高い』
黒葡萄は「モンテプルチャーノ」「サンジョヴェーゼ」。 そして「ボルド」。「グルナッシュ」の仲間でサルディー ニャの「カンノナウ」の一種とも言われる。
『ボルドは 60 年代にサルディーニャからマルケに伝 わったと考えられている。土壌や気候と相性が良い が、ベト病に弱く収量が少ない』
生産量は年間 6,000 本。生活できる量ではないので 現在も壁・床造りの本職を続けながら、家族だけでワ イン造りをしている。
トレビエン!
醸造所は小さいステンレスタンクが 5 個と古いバリッ クだけ。ポンプも無いのでラッキングも手作業。勿論、 ボトリングマシーンも無い。
■トレビエン 100%トレビアーノ
『最高だねという意味を込めた名前。60 年と 40 年 の樹。収穫後、少し破砕して皮ごと発酵。マセラシオ ンは 10 日間』
収穫した区画毎に分けて発酵。それぞれの酵母の 働きで異なる個性の原酒になる。それをアッサンブラ ージュすることで複雑さが出る。
■コセコセ・ロゼ 100%サンジョヴェーゼ 最高の熟度に達したサンジョヴェーゼを使う。アルコ ール度数は約 15度。サンジョヴェーゼはこのワインに しか使わない。選別された葡萄ではない。
『自然発酵で 15 度まで上がると酵母が死んで発酵 が終わる。潜在糖度が高いので糖分が若干残る。 それくらい高いポテンシャルの葡萄』
■アルシューラ 100%モンテプルチャーノ 3 ヶ所に分かれた畑を別々に小さなステンレスタンク で発酵させる。畑が違うと酵母も違うので発酵後は 全く違う個性の原酒が完成する。古バリックに移し替 えて 14 ヶ月熟成。
『良いクローンなので果実が凝縮する。酸、タンニン の質も高い。ただ収量は通常の 1/3 程度』
■ボルド 100%ボルド(カンノナウ)
『古い畑からマッサルセレクションで移植。樹齢 10 年と若いが既に素晴らしい結果を出している』
ステンレスタンクで発酵。マセラシオン 15 日間。その 後古いバリックで 24 ヶ月間熟成。