Mario Gatta マリオ・ガッタ
イタリア Italia / Lombardia
人生の最後に造りたい『理想のフランンチャコルタ』
フランチャコルタの優良生産者「ガッタ」を 1 代で築き上げた「マリオ・ガッタ」が引退。自分の理想のフランチャコルタ を造る為に 1 人でワイン造りを開始した。
自然農業コンサルタント
高品質フランチャコルタの造り手「ガッタ」。1958 年 に創業者の「アンジェロ・ガッタ」が葡萄栽培農家を 始めたのが始まり。 「アンジェロ」の死後、息子達によって農園は続けら れたが、兄弟の末っ子「マリオ」は奥様と一緒に自然 食のトラットリアを始める。
『同時に自然農業のコンサルタントとしても働き始 めた。パオロ・ベアの畑造りも担当していて、パオ ロ・ベアとは今でも仲が良い』
兄弟は畑を買い足し、「マリオ」は栽培だけでなく醸 造も手掛けるようになっていく。1996 年にはフランチ ャコルタの生産を開始。 現在では 20 万本/年を生産する中規模高品質カン ティーナにまで成長した。
『ガッタを成功させる為に働き過ぎた。人生の最後 は好きな事をしたい。その時に思いついたのが手造 りのフランチャコルタだった』
「マリオ」は一部の畑を残し、「ガッタ」を 2 人の息子 に譲り、自らは自宅のガレージでフランチャコルタ造 りを続けることに。 こうして誕生したのが「マリオ・ガッタ」。1 人で畑を管 理し、収穫も1人。勿論、醸造も1人で行う。年間生 産量は 20,000 本。
『40 年の畑仕事で、この土地で何をすべきか、何を すべきでないかが解ってきた。残りの人生で理想を 追求してみたい』
マリオの理想を追求
畑はフランチャコルタの最東部「グッサーゴ」と「チェ ラティカ」。標高は 300~550m。
『ここには氷河はきていない。海底が隆起した土壌 で他のフランチャコルタとは全く違う土壌。だから同 じワインはできない』
一般的なフランチャコルタは氷河が押し運んだ堆積 土壌で粘土は少なく、石灰含有量は低い。砂質が 多く、川由来の小石が混じる。 これは熱を蓄える土壌で葡萄は早く成熟し、十分な 糖度を早目に得ることができる。
『グッサーゴは粘土石灰質土壌。川ではなく海に由 来する土壌で貝殻などが沈澱し、固まった石灰岩 が多く含まれる』
粘土は水分を含むので夜間に葡萄樹を冷やす。標 高も高く、石灰の影響で痩せた土壌。 葡萄は果実よりもミネラルや塩っ気を感じさせるよう になる。テンションが高く、柔らかさが無い。果実より もミネラルの表現に向く。 この土壌を活かしたワイン造りこそが彼の理想。
『土壌を活性化させることが大切。だから、畑では 銅も使わない。代わりにゼオリーテ・クバーナを使用 する。全ての畑はビオロジック』
硫黄は使うが、ベト病対策の銅は土壌に蓄積してし まうので使用しない。その代わりに使われるのがゼオ リーテ(沸石)。 沸石は湿気を吸着する作用があり、葉に付着させお くことで湿気を抑え、病気を予防する。天然の素材 なので土壌に影響はない。
『肥料も与えない。元々葡萄樹は生命力が強いの で自分で自分の実を守ることができる。親が子供を 守るように樹が葡萄を守る』
除草剤を撒けば根が地中深くに伸びない。少しの降 雨で地表が崩れ、根も大きなダメージを受けるよう になる。 除草剤を撒かなければ葡萄根は地中深くに伸び、 葡萄樹は、少しの雨でも動かない。
『葡萄に自然の脅威と自然の優しさを両方経験さ せることが大切。子育てと同じで経験値が高いと葡 萄は勝手に強くなる』
フランチャコルタは名乗らない
畑は全てフランチャコルタ内だが、フランチャコルタ を名乗らない。協会が言うフランチャコルタの個性と は異なる味わいだから。
『フランチャコルタの規定な中では自由なワイン造り ができない。自分の理想を追求したい。誰かに合わ せたくない』
自然酵母での長期発酵。葡萄自体のポテンシャル に合わせてシュール・リーの期間を決めていく。
『澱は酸素を吸着する機能と澱自体の旨み、タンパ ク質をワインに与える 2 つの機能を持っている。2 つの機能のバランスが重要』
■トラッチャ・ドサージュ・ゼロ 100%シャルドネ 40 ヶ月のシュール・リー。重厚なシャルドネと繊細さ を持つシャルドネをアッサンブラージュ。 軽さがありながらも余韻は膨らみがあって満足度が 高い。後ろに強靭なミネラルがある。
『完全に発酵しきっているので残糖分はほとんどない。でも痩せて感じないのはシュール・リーで旨みが 出ているから』