Charvin シャルヴァン
フランス France / Cotes du Rhone
全房発酵、コンクリートタンク熟成の繊細さ
R.パーカーの影響で濃厚で樽の強いワインになってしまったシャトーヌッフ・デュ・パプで唯一
全房発酵、木樽なしのコンクリートタンク熟成で繊細な土地の表現に拘る
❖ラヤスに最も近い造り手❖
ドメーヌ・シャルヴァンは1851年にギョーム・シャルヴァンによってシャトーヌッフ・デュ・パプの北端、オランジュで創業。当初は野菜と葡萄の栽培を行う典型的な栽培農家でした。
『100年後の1951年にワイン醸造を開始しますが、ほとんどはバルクで他の造り手に販売していて、シャルヴァンの名前で販売する事はありませんでした』
1990年に現当主、ローラン・シャルヴァンが20代の若さでドメーヌを相続すると畑の改良を進め、品質重視に切り替え、ボトリング比率を高めていきます。
『6代目、ローランは若かったので積極的に有機栽培を導入し、畑のポテンシャルを高めていきます。更に伝統的全房発酵と大型セメントタンクでの発酵・熟成を導入』
1990年が正式なローランのファーストヴィンテージで当時は全く無名だったが、R.パーカーが「ラヤスに最も近い造り手」と称したことで注目されるようになります。
『シャトーヌッフ北部の北斜面の多様性のある土壌を持つ畑を所有しているので近年の乾燥や暑さにも耐えられる。石の畑は暑さに弱く、砂と粘土の畑は暑さに強い』
当時のシャトーヌッフ・デュ・パプの所有畑は4haのみ。徐々に増やし、現在では8haを所有。シャトーヌッフに隣接するコート・デュ・ローヌにも12haを所有しています。
❖北部北向き斜面❖
『所有畑は全てシャトーヌッフ北部の北向き斜面で粘土石灰質を中心に砂岩質、チョーク質主体の畑も含む。南部の大きな石に覆われた暑い畑ではないのです』
キャブリエール、モーコイユ、アルネスクの3つのリューディに位置していて、14区画に分かれている。全て北部。典型的な「ガレ・ルーレ」と呼ばれる石に覆われた畑の比率は低い。
『沖積層に由来する海洋性の砂岩の畑と赤い粘土質の畑が主で、ローヌ川の方面には僅かにチョーク質の畑も所有する。この多様性がシャルヴァンのワインを複雑にしているのです』
グルナッシュは酸性でPHが高い土壌と相性が良く、元々の個性である繊細さやミネラル感を得ます。砂岩は酸性でPHも高いので理想的なのです。
『また、北向き斜面は、最も強い午後の日差しを受けず日照量が比較的少なく、葡萄の成熟がゆっくり進むのでフェノール類が複雑で豊富になる傾向がある』
ローランは暑いシャトーヌッフでは石に覆われた畑や南向き斜面は過度に葡萄樹を暖めてしまうので、ワインに緊張感が足りなくなると考えているのです。
『石に覆われた畑は過熟気味で熱さを感じさせる。決してガレ・ルーレが最高の条件ではなく、色々な土壌のアッサンブラージュで繊細さを持ったワインを目指す』
シャトーヌッフの標高は120m程度と低く、年間を通して温暖でミストラルによって乾燥しているが、ローヌ川に近いシャルヴァンの畑は地下に水脈があり、過度な水分ストレスはありません。
『グルナッシュは寒さに弱く、晩熟。直射日光が多過ぎないで9月まで暖かい北斜面でゆっくり成熟することで複雑味を得ることが可能になっているのです』
❖全房発酵・セメントタンク熟成❖
『1990年が初ヴィンテージのシャトーヌッフでは比較的新しい造り手でありながら、栽培、醸造、熟成まで現代的な要素は全く無いのがローランのワイン造り』
畑では除草剤、防虫剤、防カビ剤は一切使用しない有機栽培を実践。醸造面も栽培同様に、過度な介入を避ける。樽や酵母のニュアンスをワインに与えない。
『80%がグルナッシュでシラー、ムールヴェードル、ヴァカレーゼ、カリニャンを栽培。シャトーヌッフ・デュ・パプに使う葡萄は全て樹齢50年以上の樹のみ』
最も古い区画は1910年に植えられた区画で樹齢110年以上。最も若い区画でも1970年代に植樹されているという贅沢さ。仕立ては伝統的ゴブレのみ。
『収穫は全て手収穫。基本的に、梗まで成熟させてから収穫し、100%全房を使ってセメントタンクで発酵。ステンレスタンクは温度変化が激しいので使わない』
熟成においても木樽は一切使用しません。大型のセメントタンクのみでの熟成でグルナッシュの繊細さを失わないようにするというのが、シャルヴァンの最大の特徴です。
『不幸な事にシャトーヌッフ・デュ・パプの造り手達はR.パーカーの影響で、強く濃く、樽の強いワインを目指してしまった。グルナッシュの繊細さは失われたのです』
シャトーヌッフの土地の味を繊細なグルナッシュで表現するには樽の要素や過度な抽出は避けなければいけない。1ヶ月の長く刺激しないマセラシオンで優しく抽出するのです。
『コート・デュ・ローヌ・ルージュの畑はシャトーヌッフに隣接していて、ほぼ同じ条件。栽培、醸造に関してもシャトーヌッフ同様に野生酵母でセメントタンクのみ』
シャトーヌッフで全房発酵を採用する造り手は少なく、一時期はシャルヴァンだけでした。全房のお陰で発酵はスムーズに進み、少しのヴェジタル感がスパイスになるのです。
『果実だけでなく、茎まで熟した果房でないと全房発酵はできないが、北向き斜面の畑は生育サイクルがゆっくりなので、茎が茶色く熟すので全房醗酵が可能なのです』
R.パーカーはシャルヴァンのワインを「シャトーヌッフのリシュブール」と評しました。それと同時にラヤスより重厚とも評しています。葡萄のポテンシャルが高い事を意味しているのでしょう。