Comte Abbatucci コンテ・アバトゥッチ

フランス France / Corse

コルシカの固有品種を復活させた伯爵家の末裔

コルシカ島の英雄「シャルル・アバトゥッチ」の末裔がコルシカ固有品種を復活させるべく奮闘。山ごとビオディナミを導入し、コルシカらしい素朴な味わいで他には無い個性を感じさせる。

フランス革命の立役者

フランス革命の立役者として知られ、ナポレオンと共に活躍した「シャルル・アバトゥッチ」を祖先に持つ、コルシカの英雄が「アバトゥッチ家」。
今も、アジャクシオの街には「アバトゥッチ」の名が付けられた道路、公園が残っている。今もコルシカで最も重要な一族なのだ。

『アバトゥッチ家のもう1つの功績が60年代にアントワンヌ・アバトゥッチが農業協議会の会長に就任し、コルシカ独自の農作物の保全に務めた事』

コルシカ独自の品種や栽培の絶滅を危惧し、各地で固有品種の保全を訴えるが、生産性重視の現代化に押され、徐々に廃れていった。
19世紀に入るとアバトゥッチ家はアジャクシオの南、タラヴォ丘陵を開墾し、自らコルシカの固有品種を中心にワイン造りを開始する。

『アントワンヌは各地の荒廃していく畑の枝を切り、自分の畑に接木して固有品種を保存、増やしていった。その品種は今も残されている』

今では観光業が主流のアジャクシオ。周辺の畑は、厳しい自然環境の為に、ほとんどが放棄され、荒廃し、今では残っていない。

『18種類のコルシカ固有品種をアントワンヌが保護し、息子で現当主ジャン・シャルルが引継ぎ、固有品種を活かしたワイン造りを再開した』

山ごと全てビオディナミ

1992年に現当主「ジャン・シャルル」が父親から引継ぎ、古樹のマッサルセレクションを開始。更に、2000年から全ての畑でビオディナミを導入。

『基本的に耕作は馬と人の手で行い、トラクターは畑に入れない。畑の移動は軽量の電動バギー。醸造所の電気は自家発電に切り替えた』

畑ではボルドー液も含め、農薬は一切使用されない。肥料も自家製で3年間熟成させたものを使用。電動バギーで排気ガスさえもない。
ブルゴーニュやボルドーとは違い、畑の周辺は森。葡萄樹が他の植物と相互に影響を与えながら生育することが普通の環境。

『ビオディナミは土地のものをできる限り使っている。周辺の自然の中で持続可能な農業を行い、コルシカ独自のワインを残していく』

「ジャン・シャルル」は本物の農業が根絶してしまうと考えていて、効率性や生産性ではなく、土地固有の文化や個性を残す活動をしている。

『コルシカには2,500年のワイン造りの歴史がある。その内農薬が使われたのは100年程度。2,400年以上自然な栽培が行われてきた』

イチジクもオレンジも水を与えることもなく成長し、実を付けている。コルシカはサルデーニャと異なり、地下水脈があり、水に恵まれているからだ。

『乾燥しても地下に水脈があるので古い樹は水脈から水分を得る。だから古樹を台樹として残し、深い根を残している』

コルシカ固有品種

『INAOは固有品種を尊重していない。コルシカ固有品種が10%しかブレンドできず、ヴェルメンティーノは75%使わなくてはいけないなんておかしい』』

伝統的農業が無くなっていく現代で、コルシカの文化でもあり、独自性である固有品種を残していくことこそが生産者としてやるべき事だと考える。

『2012年からはINAOの規定には合わせず、固有品種でワインを造り、全てヴァン・ド・フランスとしてリリースすることを決めた』』

コルシカにしかできないワインを造ることが最も重要で、世界で1番のワインを造る事が重要なのではないというのが彼の考え方。

『現在、90種類のコルシカ固有品種とコルシカのテロワールに合うだろう品種を試験的に育てている。コルシカの可能性を殺してはいけない』

コルシカの風は海の塩を含んでいる。土壌は花崗岩だが塩を含んでいる。硫黄や銅、農薬を使わない代わりに、海水を使用する。

『ビオディナミ調剤を希釈、活性化するのに海水を使うことで殺菌作用を高める実験も開始。固有品種は塩に耐性を持っている』

コルシカはフランスで最も乾燥し、最も自然が多く残っている島。工業的ワインではなく、コルシカ独自の味わいを残していくことが使命。

『コルシカでしかコルシカのワインは造れない。それなのにコルシカで世界中と同じワインを造ろうとするのは異常だと思う』

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