Perillo ペリッロ
イタリア Italia / Campania
標高680m カステルフランチ村の『タウラジ』
11月以降に収穫される世界で最も遅い収穫地、カステル・フランチ村。酸度と凝縮度、種子まで完熟した味わい。 タウラジ村よりも150m も標高が高いので全く違う味わい。
世界で一番遅い12月の収穫
開花から収穫されるまでの期間が世界で最も長い産 地と言われるのが「カステルフランチ」村。標高は 680m。この地で葡萄栽培農家として生計を立てて きた「ペリッロ」家。 現当主は「ミケーレ」。80 年代までは「マストロベラル ディーノ」に栽培した葡萄を全量売っていた。今では 家族 4 人で栽培から醸造まで手掛けている。
『雪が降った後に収穫することもある。ゆっくり成長 していく萄葡は青さのないタンニンを得る。アントシ アニンも成熟する』
150m 標高の低い「タウラジ」村の収穫は 9 月初旬な ので 3 ヶ月も収穫時期が違うことになる。
『収穫時期が早い葡萄は栄養素を香や味わいに完 全に変化させられない。樹に葡萄が長く着いていれ ば各要素は成熟する』
気温が上がらないので葡萄はゆっくり成長。アルアニ コの酸度は高いので糖度がなかなか上がらなくても 酸度は確保できる。
『収穫が遅いとリスクは雨。毎年、雨季が過ぎた後 に収穫するカステルフランチでは全く問題ない』
イタリア全土で記録的な暑さだった 2003年でも「カス テルフランチ」は寒かった。暑かったタウラジ村では 2003 年の収穫は 8 月後半だったが、彼等の収穫は 11 月第 2 週だった。
自根90年のアリアニコ
『タウラジ村から 150m 高い標高のカステルフランチ。 標高は 680m。夜は夏でも氷点下まで下がる』
年間を通して山風が吹く。グイヨ仕立では耐えられな いので、この地の伝統的仕立「ラジエッラ」仕立が採 用されている。
『ラジエッラ仕立は収量が多くなるのが欠点。しかし 収量の少ない 90 年以上の古樹が主体なので自然 と収量は制限される』
彼等の畑の樹齢は平均 90 年。100 年を超える葡萄 も多く、そのほとんどは「プレ・フィロキセラ」。
『カステルフランチは標高が高いのと砂質が多いの でフィロキセラの害から逃れることができた。今でも 自根のアリアニコの原種が残っている』
彼等の畑のアリアニコは一般的なアリアニコとは違う。 通常のアリアニコのクローンとは違う。
『コーダ・ディ・カヴァッロと呼ばれるアリアニコで房が 長く結実不良が多い。粒と粒の間が空いていて身 なりが悪い。小粒』
馬の尻尾という意味の「コーダ・ディ・カヴァッロ」はア リアニコの 1.5 倍の長さ。 ピノ・ファンのように結実不良が多い。アリアニコ以上 に晩熟。他の産地では育たない。
『1 房に 10 粒以上と結実不良が多いのが特徴。水 分量が少なく葡萄自体の凝縮度が高い。よって果 皮の影響を強く受ける』
結実不良のお陰で粒と粒の間に風が通り、葡萄は乾 燥する。これでベト病やカビに侵される事がない。
栽培・醸造は自然に
『剪定はしない。高齢のコーダ・ディ・カヴァッロは自 然と収穫量が減る。1 つの樹に 3 房程度』
昔ながらの畑なので密植ではない。1,500 本/ha。そ れでも収量は 35 キンタリ/ha とタウラジの基準である 100 キンタリ/ha を大きく下回る。
『畑では薬剤も除草剤も使用しない。樹が病気に対 して抗体を持っているし、高地で乾燥している為病 気自体がほとんど無い』
土壌は粘土質の下にカルシウム豊富な岩盤があり、 地表には白い石灰岩が露出する。粘土は保水性が 高いので雨の少ないこの地域でも葡萄栽培を可能に している。 下草は自然に残され 7 月に 1回だけ刈り込みが行わ れる。(基本的には不耕起) 醸造所は自宅地下。大樽 5 つと使用済みトノーが 20 樽程度という小さなもの。
『タウラジとタウラジ・リゼルヴァは全く同じワイン。収 穫し、発酵。熟成の過程で早く開いている樽をタウ ラジにして、硬く閉じている樽をリゼルヴァにして 2 年長く樽熟成を行う』
近年、自宅裏の急斜面の畑を購入した。アリアニコ の古樹に混じって少量の「コーダ・ディ・ヴォルペ」が 植わっていた。
『樹齢も解らないが収量が少なく、明らかに凝縮度 が高かった。抜かずに単一品種の白として醸造する ことにした』
フレッシュでフルーティーなワインではない。タウラジ にも負けない骨格のある「コーダ・ディ・ヴォルペ」。こ の品種で最も偉大なワインだと思う。